2023年3月9日(木)川瀬賢太郎指揮/日本センチュリー交響楽団第271回定期演奏会 ヴァイオリン ティモシー・チューイ

19時開演 ザ・シンフォニーホール

2月定期からあっという間、今シーズン最後のセンチュリー定期。

川瀬賢太郎マエストロを迎えた今回は「ウィーン」がテーマ。
ヨハン・シュトラウスⅡの「皇帝円舞曲」、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」の間に演奏機会の少ない2作品を挟んだ、定期ならではの洒落たプログラムでした。

今回のメインは、ティモシー・チューイ氏をソリストに迎えたコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲。
ウィーンで活躍していたコルンゴルトは、無調音楽が潮流となっていた時代にアメリカに渡り、調性のある音楽を作り続けて映画音楽の祖というべき存在になった作曲家。この作品も当時は時代錯誤との誹りも受けたようですが、初演のヤッシャ・ハイフェッツが愛し演奏し続けたことで世に知られるようになったとのこと。やはり生き残るのは「普遍的な美しさ」ですね。

もちろん予習して臨みましたが、初めて聴いたその時から、甘い旋律とハリウッドの映画音楽に繋がるアメリカ的明るさが漲る音楽に引き込まれました。
ティモシー・チューイ氏のヴァイオリンが素晴らしい。うねり揺蕩う独特の歌い口は、彼の個性なのかこの作品に合わせたものなのか初聴きなので不明ですが、黄金色の蜜のような音色で、高音の響きが大変に魅力的。大見得を切って終わった1楽章の後で拍手が起きました。オキテを知らない客が手を叩いたのをきっかけに、追随した拍手も混じっていたようです。この拍手は「あり」。チューイ氏も嬉しそうで、生のコンサートの醍醐味を感じるひと幕でした。

休憩を挟んで、後半は20世紀後半にウィーンで活躍した作曲家アイネムの「フィラデルフィア交響曲」。名前の通りで、フィラデルフィア交響楽団の委嘱作品。交響曲と聞くと長大な作品かと思いますが、演奏時間は20分足らずで3楽章の構成。
とても平和で整った感のある1楽章、第九の2楽章へのオマージュかパロディかと思える2楽章、ラテンのリズムを感じる3楽章、と聴きやすい作品でした——ので、途中3回ほど気を失ってしまいました。ワーグナーでは一睡もしなかったのにねぇ。スミマセン。

「ラ・ヴァルス」は皇帝円舞曲と対にされた選曲。
終盤はものすごくアクセントを効かせた演奏になっており——汚い、と思ってしまう一歩手前まで——これは、第一次大戦で破壊されてしまったヨーロッパ、シュトラウス一家のワルツで優雅に踊っていた時代は瓦解していまったのだ、ということを表わしていたのでしょうか。何度か生で聴いていますが、やっとこの作品の意図するところがつかめました。マエストロに感謝です。

川瀬マエストロの指揮は大変にわかりやすく、次にどういった音楽が出てくるのか、鑑賞のガイドにもなります。加えて今回の歴史的な視点で組まれたプログラムも秀逸。有意義かつ大変満足感のある演奏会でした。

 

◇ソリスト・アンコール
バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ ソナタ第2番BMV1003よりⅢ.Andante
今までもソリストアンコールでバッハの無伴奏は何度も聴いていますが、ひとりで通奏低音も奏でていることに初めて気が付きました・・。

◇座席
1階中ほどの見づらい座席ともシーズン終了の今回でおさらば!と思っていたら、この日の前列は小柄な高齢女性で視界良好でした。
次季4月からは2階最前列中央に座ります。楽しみ!

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