2026年3月5日(木) 中村恵理ソプラノリサイタル

19時開演 ザ・フェニックスホール

リサイタルで聴くのは初めての中村恵理さん。
「ガチ」のリサイタルでした。

「ガチ」の理由は後から記すとして――今年のNHKニューイヤーオペラコンサートでの「トゥーランドット」リューのアリア「お聞きください」のピアニシモの美しさに感嘆し、その勢いでポチっと買ってしまった公演でした(今年はコンサート回数を減らす、とどこかに書いたような気がしますが、どこへやら)。

プログラムは、前半に軽めのオペラアリアとイタリア歌曲、日本の歌曲、ドラマティックなイタリアの歌曲、後半に有名オペラのアリア、という構成。

後から振り返ってみると、リサイタル全体、そしてひとつひとつの曲についても、終盤に向けてエネルギーをかけていく構成であったと感じています。

ということで――冒頭の「すみれ」から続く3曲は、ごく軽めの歌唱で、意外と響かない印象。次の日本の歌曲、中田喜直「たんぽぽ」、信時潔「占うと」、中田喜直「さくら横丁」も、それほど力を籠めず、「これ見よがし」には歌わず、さらに古語であるためか日本語が若干聞き取りにくく、あのドラマティックな中村恵理はどこに?と思っていたのですが――その後一旦袖に戻り、再びステージに帰ってきてからのイタリア歌曲になると、一段階ギアが上がり、パッと雰囲気が華やぎました。

前半最後の曲、レオンカヴァッロ「マッタレーナ」は、最高潮の盛り上がり。そう、これが聴きたかった!(でもこれテノールの歌では?と思い、プログラムを読むとやはりそうでした。村上敏明さんの声がよみがえる‥笑)

後半は有名なオペラのアリアが5曲。
まず1曲目は、グノー「ロミオとジュリエット」より「私は夢に生きたい」。これも出だしで「一発ぶちかます」的なことはせず、前半は軽めに、後半に向けて徐々にテンションを上げていき、結びに頂点を持ってくる、という曲作りでした。

これは効率的かつ効果的な歌唱。高音の発声も、いきなり強く高く出すのではなく、「台」をひとつ作っておいてそこから跳躍し、確実に上げる。そして、その「台」の部分が表現と一体になっているところがまた実に巧みなのです。

頂点と定めた箇所にエネルギーを集中させ、声を無駄遣いしない。声を大事にして、長いキャリアを築いていくことを考えておられるのかな、とも感じました。

「カルメン」ミカエラ、プッチーニ「つばめ」マグダ、「ラ・ボエーム」ミミ、そして最後は「椿姫」ヴィオレッタ「そはかの人か~花から花へ」。ここで完璧に頂点が築き上げられました。後半になって次第に増してきた声の密度は終曲で最高潮に達し、高音の強さと美しさ、そこに表現が加わり、これぞ中村恵理の真骨頂、圧倒的な演唱。

これほどの歌唱技術と表現力で以って歌そして役柄を作り上げる力量は、現在の日本で右に出る人はいないのではないか、その思いを強くしました。

ところで、「ガチ」の理由ですが――なんと、途中に一切のトークがなく(アンコール曲の紹介もなく)、ピアノ単独の演奏もなく、歌のみでリサイタルが構成されていたのです。歌のみのガチンコ勝負。カッコいい。

地元関西でのリサイタルなので、恵理さんの関西弁トークが聞けるかも?と期待していたのですが、残念ながらそれは叶わず。声は歌のために大切にされているのですね。その姿勢もカッコいいと感じた次第です。

◇アンコール
マスカーニ:「花占い」
ヴェルディ:「リゴレット」より「慕わしい人の名は」(つい先日、新国立劇場で歌われたばかり)

◇座席
2階上手側1列目
手すりが被って歌手の胴体中央とピアニストの頭部が見えない。先週の「朝の光」2列目も今ひとつだったので、次からは3列目で。

タイトルとURLをコピーしました