2023年3月1日(水)ブルース・リウ ピアノ・リサイタル

19時開演 ザ・シンフォニーホール

一昨年のショパンコンクールの覇者、ブルース・リウ氏のリサイタル。

第一位を獲ったピアニストの演奏とはどんなものなのだろう?という好奇心で出掛けたリサイタルでした。

ショパンから脱しつつある感のプログラムで、冒頭にフレンチ・バロックのラモーの小品、中ほどにショパン、最後にリストの超絶技巧で締める、という構成。
ショパコン時に話題になった「《ドン・ジョヴァンニ》の”お手をどうぞ”の主題による変奏曲」にリスト「ドン・ジョヴァンニの回想」を合わせてあり、「名刺代わり」の秀逸なプログラムでもありました。

ショパコン配信時、低くした椅子にやや背を丸めた姿勢で座り、伸ばし気味の腕でスピード感あふれる音楽を繰り出す様は、まるでレーシングカーを操っているかのようで、ファツィオリがフェラーリのようだと思って見ていた記憶があります。

このリサイタルでもピアノは同じくファツィオリ。低い椅子も同じでしたが、背筋はまっすぐで私の記憶違い?と思いましたが、ドライブ感あふれる演奏はそのままでした。

そしてやっぱりこの人はショパンではなく、リストが似合う。とにかくめちゃめちゃ弾けるのです。それに速く弾けば弾くほど、エッジの効いた煌めく音色が美しい。いわゆる「真珠の粒を転がすような」美音は、期待していた冒頭ラモーでは聴かれず、やはり速弾き超絶技巧が得意なピアニストなのだと認識。もっと超絶技巧で盛ったプログラムでもよかったのでは?むしろそれが聴きたかった、とも思いました。

双眼鏡で手元も観察しましたが、がっしりと骨張った男性的な手で、いくら弾いても大丈夫!と思える頑健さを感じました。

一方で、ショパンの葬送ソナタには、あまり伝わってくるものが感じられず——素晴らしい演奏や美しい音を聴くと、情景が浮かんだり、音が形になって見えてきたりするのですが——そういう音楽体験を得ることはできませんでした。4楽章のあの不思議な弱音の高速ユニゾンのテクニックなどは素晴らしかったのですが。

アンコールは5曲。4曲目のリスト「ラ・カンパネラ」の演奏は絶品で、スタンディング・オヴェイション。私も思わず立ち上がってしまいました(笑)
満席の観客の熱に応え、再び椅子に腰を下ろすと、客席全体から驚きと喜びの混じった「おぉ~!」という大きなどよめき。ショパンの遺作ワルツで納得の終演となりました。

◇アンコール
ショパン:ノクターン第20番 嬰ハ短調「遺作」(「戦場のピアニスト」で有名)
ショパン:3つのエコセーズ op.72-3
バッハ:フランス組曲 第5番ト長調
リスト:ラ・カンパネラ
ショパン:ワルツ第19番イ短調「遺作」

◇座席
1階P列下手 通路から2席目。視界良好。
シンフォニーホール1階席の下手・上手は前席と被らず極めて見やすい。
(前席とがっつり被る正面席はS席で売るのはどうかと思う視界不良ぶりですが・・)

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