2023年12月9日(土)クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル

17時開演 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

登壇演奏会の同日にまた演奏会に行くという、これまでにないダブルヘッダー。

実は今回の第九の最大のミッションは、如何にして素早く次の会場に向かうか、ということでした(笑)。なので、着替不要の衣裳で登壇し、舞台から退場後は楽屋タッチ&ゴーでホールから退出。全出演者中最も早い退出者だったと思います。

割と余裕で芸文センターに到着。

ツィメルマン氏のリサイタルは一昨年も同ホールで同時期に行われたのですが、その時はメサイアのリサイタルと時間が重なって行けなかったこともあり、今回は多少無理をしてでも行きたかったのです。

そしてやっぱり、行って聴けてよかった。
静かな感動に包まれる演奏会でした。

巨匠と呼ばれるピアニストですが、真摯でひたむきな青年がそのまま年を重ねた、という印象。豊かに輝く銀髪が美しい。すべての作品で楽譜を置いての演奏でしたが、それが作品への誠実さを表しているようにも感じられました。

プログラムは、ショパンのノクターン4曲から始まり、同じくショパンのソナタ第2番。休憩後はドビュッシー「版画」とシマノフスキの「ポーランド民謡の主題による変奏曲」。どの作品も、その清明で透明感のあるピアノの音色に合うものでした。

冒頭の清らかなショパンを聴きながら、休日の午後にはルービンシュタインの弾くショパンのレコードを聴いていた中学生の頃を思い出してしまって、やはり私の音楽好きの原点はこれであるなぁ、と感慨に浸ってしまいました。

今回のプログラムで気になったのは、ショパンのピアノソナタ2番にも、シマノフスキの変奏曲にも「葬送行進曲」が含まれていたこと。プログラムとして関連性を持たせているのは理解できますが、シマノフスキのそれはショパンよりも重苦しい音楽で、この2作品を並べた意図はなんであるのかと深読みしたくもなりました。

シマノフスキ作品を聴くのは実は初めてだったのですが、19世紀終わり頃に生まれた作曲家で、この作品はショパンのようでもあり、ラフマニノフのようでもあり、美しさと超絶技巧を併せ持った聴き応えのある作品でした。まだまだ知らない名作はいっぱいあります。

ところで——近年ピアノリサイタルは数多く聴いているので、美しいピアニシモ、連続音の粒の揃い、強靭なフォルテシモなどそれぞれにこれよりも優れた演奏を聴いてきたと思いつつ、そしてその都度それらと比べてしまったりもしつつ、それでも総体としてこの演奏は素晴らしい、と思える鑑賞体験でした。

アンコールはラフマニノフの前奏曲を2曲。これには胸がいっぱいになりました。
2曲目はヴェルビエ・ガラでプレトニョフ氏が弾いていたOp.23-4。RCOのアンコールではブロンフマン氏でOp.23-5が聴けたこともあり、連続して巨匠で聴けて感激。

楽譜はアンコール曲まで通しで製本してあるものでした。そして2曲目を弾き終わると同時にピアノの蓋を閉める「これでおしまい」パフォーマンス。品の良いユーモア。会場から笑いが起き和やかな雰囲気での終演でした。

 

◇アンコール
ラフマニノフ:前奏曲Op.32-12、Op.23-4

◇座席
3階下手側3列目通路側。
例の落下防護柵が目障りな席(ガックリ)。学習要!ピアニストに柵は被らず何とか許容範囲。

◇その他
チケット発売時にはプログラムの発表なし。福袋を買った気分でもありましたが、でもリサイタルってほぼその演奏家が聴きたいから行くものですよね。

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