2023年5月13日(土)伊藤順一 サロンコンサート

14時開演 世良美術館

御影の世良美術館で、ピアニスト伊藤順一さんのリサイタルを聴いてきました。

伊藤順一さんを知ったのは、一昨年のショパンコンクールの一次予選の配信だったのですが、既に独自のスタイルを持った安定感のある演奏が印象的で、生で聴いてみたいと思っていたピアニストでした。

このリサイタルはツイッターで知ったのですが、伊藤さんクラスのピアニストを間近で鑑賞できる、なんと贅沢な機会だろうと早速に申し込んだのでした。

会場は美術館の建物に入ってすぐの展示室(サロン)。
最大で80名とパンフレットにありましたが、この日は満席。会場に早く着いたのもあり、前から2列目の通路際で手元もよく見えるよい位置の席を確保できました。

1曲目は指慣らしも兼ねて?ハイドンのソナタ。続いて、チャイコフスキー「四季」の1月~6月まで(残りの6か月は次回)。休憩を挟んで、ラヴェル「クープランの墓」全曲、という会場の規模にも合ったセンスのいいプログラム。

最初の音が鳴った時には、まるで鍵盤が存在しないかのようなタッチに心を奪われました。ピアノは確かに鳴っているのですが、鍵盤が介在していないかのような・・不思議な感覚。それと同時に、ほんの2~3メートル先で美しい音楽が奏でられている、その贅沢な体験に至福の思いで、ホールで聴くのとはまた異なるサロンコンサートという、新たな音楽の楽しみ方を知ってしまいました。

休憩後のラヴェルの前に伊藤さんのトークもあり、ピアノの音やタッチによる響かせ方など、実演も交えた興味深いお話しが聴けました。
ヨーロッパ製のピアノは乾燥した気候の材木を使っているので多湿な気候とは相性がよくない、日本製はその点日本の気候には適している、とか、近年の日本のピアノはインドネシアなどのより多湿な地域の材木が使われているとか——湿度が高い時は音がこもりやすいので指を立てて明瞭な打鍵にしている、など。この日は雨模様だったのですが、確かに最初のハイドンでハイ・フィンガーだったのはそのせいだったのかと納得でした(ピアニストの指使いはいつも凝視してます笑)

この美術館は画家の世良臣絵さん(故人)の私設美術館で、周辺は瀟洒な戸建て住宅が建ち並ぶ高級住宅街。お金持ちの贅沢をお裾分けしていただいたような気分でした。

◇アンコール
ショパン:幻想即興曲
グリーグ:「トロルハウゲンの婚礼の日」

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