11時開始 大阪ステーションシティシネマ
1年半ぶりに再開したMETライブビューイング。
今シーズン最初のプロダクションは「ボリス・ゴドゥノフ」。以前から観たかった演目なので、年休を取って最終日に行ってきました。
METビューイングの楽しみのひとつでもある、歌手によるオープニング・トークは、今回ソプラノのエンジェル・ブルー。前シーズン「ポーギーとベス」のベス。次回作にも出演でその予告も兼ねての登場でしたが、名前にちなんだブルーのワンピースにピンクのネックレスがよく似合って素敵。その彼女が冒頭にこやかに「みなさん、おかえりなさい」と言った時、思いがけず涙が出そうになりました。そう、やっと再開したのですよ。よかった!嬉しい!
幕が開いてすぐのシーンは民衆の合唱でしたが、多い多い、100人くらいいるのではないかと思う超「密」の大合唱。以前とまったく変わらず、変えず、再開させたのだと、信念の強さも感じました。
史実に題材を採った、プーシキンの戯曲を基にしたムソルグスキーの作品。バスが主役という数少ないオペラのひとつでもあります。そしてキャストのほとんどが男声。題名役はドイツの世界的なバス歌手、ルネ・パーペ。さすがの歌唱、演技、存在感でしたが、脇を固める歌手陣もそれぞれ個性的で歌唱も素晴らしく、主役の存在感が薄れるくらいでした。
グリゴリ—のデイヴィット・バット・フィリップ、シュイスキー公のマクシム・パステルはともに悪党ぽい演技もよかったけれど、そのテノール・ヴォイスがまた素晴らしい!胸のすくような透明感ある高音に惚れ惚れしました。
そして「真実を知る」僧ピーメン役のアイン・アンガーのバスの美声と佇まい。その存在感がものすごくて画面に食い入るように観てしまいました。
音楽はホールで生で聴いた方がもちろんいいに決まっていますが、ライブ・ビューイングは歌手の表情がアップで見れるのでより物語に入りやすい、と改めて思いました。と同時に人間ドラマが濃く描かれているこの演出が素晴らしいのだとも感じました。
主なキャスト以外にも、宿屋のおかみさんもよかったし、ボリスの息子フォードルが本当に少年に見える小柄なメゾのズボン役でこれには驚きました。なので、これらの歌手のプロフィールも知りたい、と今回初めてシーズン・プログラムを買ったのですが・・主なキャストしか載ってない。ガックリ。内容薄いプログラム(怒)
カーテンコールも今までどおりで、歌手、マエストロも手をつないでいたし、客席は総立ちでブラヴォー。何もかもが戻ってきていました。それを見てまた涙が出そうに(笑)
この状況を見ると、日本の手をつながないカーテンコールやブラヴォー禁止は過剰だと感じてしまいます。この用心深さが日本の良いところでもあるのですが。
ところで、このプロダクションはムソルグスキーの原典版で上演時間が短く、なんと休憩なしでした。
休憩なし、はMET始まって以来とのこと。幕間の観客同士の接触による感染を防止するためなのでしょう。これが唯一以前と異なった点かと思いましたが、オープニング、カーテンコール含めての上演時間2時間半は事前にトイレ対策が必要な長さでした(笑)
さて、今シーズンのMET、まだまだ観たいものが目白押しです。本当なら全部観たいところなのですが・・上演期間は土日が2回入るようにしてほしいな、と会社員は思うのでした。