2023年8月25日(金)尾高忠明指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団 メンデルスゾーン・チクルスvol.2 ピアノ務川慧悟

19時開演 ザ・シンフォニーホール

大フィル メンデルスゾーン・チクルスの第2回目は、務川さんをソリストに迎えたピアノ協奏曲第1番と交響曲2作品でのプログラム。

もちろん(!)務川さんが目的で足を運んだ公演でしたが、交響曲2作品の演奏も素晴らしくて、幸福感いっぱいの演奏会でした。

メンデルスゾーンのピアノ協奏曲は演奏される機会が少ない作品ですが、予習で聴いた段階で好きになりました(2年前のドヴォルザーク・チクルスと同様)。

冒頭から「ぶっ飛ばしていく」感じの疾走感と、連続する音数の多さ!
相当なテクニックの持ち主でないと演奏が成立しない作品だと思うと同時に、「これを務川さんで聴ける、ヨシッ!(ガッツポーズ)」と思ってしまいました(笑)

その期待通りに、まあなんとコロコロとしかも明晰に音が繰り出されること!
そして、抒情的な歌心も素晴らしく、緩徐楽章の2楽章のみならず、1楽章の途中でハッと涙ぐみそうになった瞬間がありました。音の透明感が心に沁み入ってくるのです。

ここシンフォニーホールでのピアノ協奏曲の演奏では、ピアノの音がオケに掻き消されることがしばしばあるので——サントリーホールでも同様のコメントをSNS上で見掛けたこともあり、残響が豊かなホールの短所かと懸念していましたが、この日の演奏はオケとのバランスもよく、両者の響きを堪能することができました。

あぁいつまでもこの演奏を聴いていたい、と思ったのですが、悲しいかなこの作品は短いのです。プログラムに書かれていた演奏時間は20分。ラフマニノフの半分ではないですか!仕方ないけれど残念‥でも、また大フィルで務川さんを聴けるようですよ。嬉しい!(後述します)

ピアノ協奏曲の前後に置かれた、交響曲第5番「宗教改革」と第4番「イタリア」。
どちらもオーケストラの密度高い演奏に心を掴まれました。宗教改革での賛美歌を引用した主題の扱い方やメロディアスな楽想——「ドレスデン・アーメン」を聴くと、どうしてもワーグナー「パルジファル」を思い出して心がそちらに引っ張られてしまうのですが、その絶妙な和声進行の美しさにも感じ入り、メンデルスゾーンの素晴らしさを再発見しました。

「イタリア」は文句なしに美しい演奏で、しかもよく知っているという安心感もあり、涼しく快適なホールでうっとりこっくりお休みタイムになってしまいました。スミマセン。
務川さんの演奏で心が燃焼してしまったのでしょうか?——これでは推し男子ピアニストの演奏のみを熱烈応援しに来た単なるオバサン観客です・・(その通り!)

 

◇ソリスト・アンコール
J.S.バッハ:イタリア協奏曲 第2楽章
メンデルスゾーンの功績のひとつは、「マタイ受難曲」の蘇演による大バッハの「発掘」。メンデルスゾーンへの敬意と次の演奏への橋渡しとを兼ねた優れた選曲。もちろん演奏も素晴らしかったです。

◇その他
カーテンコール後に尾高マエストロのトークがありました。
その中で、「務川くん、一昨日初めて会いましたが、素晴らしいですね! 滅多に言わないことだけど『次何やろうか?』と訊いてしまいました」と。
音楽監督であるマエストロが聴衆の前で「次」を公言されたのです。これはすごいことです!
私はこの日の音色の美しさから、瞬間的に「ショパン!」と思ったのですが、いや、サン・サーンス5番とか、ラヴェルも聴きたいな、とその後いろいろ妄想しています。いやー楽しみです!

◇座席
2階最前列の下手側。ピアノを聴く定番席。

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