2024年8月24日(土)務川慧悟 ピアノリサイタル

14時開演 いずみホール

登壇コンサートの余韻に浸っていたいところでしたが、2日後に同じいずみホールで務川さんのリサイタル。大変楽しみにしていた公演でした。

務川さんの演奏は生で3回聴いていますが、いずれもコンチェルトだったので、関西でのリサイタル開催を待っていました。今回の愛知、福島、東京、大阪、長野の5か所で行われたリサイタルは、ご自身初の「ツアー」だったとのこと。

プログラムは、バッハ、ベートーヴェンから始まり、時代を追ってショパン、フォーレ、プロコフィエフというラインナップ。務川さんの幅広いピアニズムを堪能できるものでした。

当日配布されたリーフレットにご自身の文章でプログラム決定の経緯が細かく書かれていたのですが、その考察の過程や心の内までもが表現されており、鑑賞の助けにもなるものでした。リーフレットのデザインもよく、開演前の読み物としても最適。センスの良さを感じます。

「ショパンの幻想ポロネーズを弾かなければ。どうしても」と「ふと思った」ところからプログラムの組み立てが始まったそうですが、その頭で聴くと、ベートーヴェンにもフォーレにもプロコフィエフにも同じ景色が見えてくるのです。またベートーヴェン「テンペスト」に現れるぶつかる和声などにもその後につらなる時代性が感じられ——もちろん、務川さんの卓越したテクニックと共通性を感じさせる表現力があってのことですが——非常に聴き応えのあるものでした。

一方で、フォーレからプロコフィエフへと進んでいく途中で、私が勝手に感じ始めたのは、このプログラムの裏側は「ラヴェル」なのではなかろうか?ということ。務川さんの素晴らしいラヴェルのアルバムと、つい先週映画館で観た「ボレロ 永遠の旋律」の印象が結びついてのことなのですが——裏付けとなる音楽的知識はもちろん何も持っていないので、「ふと思った」までですが、映画に描かれた、ラヴェルの過ごしたパリの風景が浮かんできたのです。

と、具体的に演奏のどこがどうだった、とはまったく書けていないのですが、大きくストーリー性を感じた演奏会でした。

しかしところで、実は終始残念に感じていたのが音響。
ホールが響きすぎるせいなのか、冒頭のバッハから終曲のプロコフィエフに至るまで、音の輪郭がぼやけた印象だったのです。

特に、バッハでの丸く明瞭な粒立ちとプロコフィエフでの切れ味の鋭さに期待を持っていたのですがーー務川さんの打鍵は、心にも身体にも訴えてくるレベルなのですーーしかし、私が聴いたやや後方の席ではどちらも物足りなかった。

SNSに上がってくる感想で、音響が素晴らしかった、との投稿を多く見掛けましたが、私にはそうとは感じられず、今もモヤモヤとしています。

実は、これまでこのホールで聴いたどの「推し様」のリサイタルも、シンフォニーホールで聴いた時ほどの感銘を受けたことはなく、そういえば芸文センターも同様であったような——ピアノ・リサイタルはシンフォニーホールでしか聴けない病?困りました。

◇アンコール
ラヴェル(務川慧悟編):「マ・メール・ロワ」より「妖精の園」
待ってました、ラヴェル!グリッサンドの優美なこと!

ショパン:英雄ポロネーズ
やっぱり締めはこれですね。しかしこの1~2年で何人のピアニストで聴いたことでしょう(今度数えてみよう)。

◇座席
いつもの後ろ寄り、下手通路側。

◇その他
隣席のおひとりで来られていた女性に話し掛けられ、休憩中ピアニスト談議に花が咲き——愛知の明和高校音楽科(北村朋幹さん、亀井聖矢さんの出身校)ご出身とのことでしたが、「推し様」がほぼ共通で話は大いに盛り上がりました。
ちなみに・・この日、亀井聖矢さんも会場で聴かれていたようです。

タイトルとURLをコピーしました