2021年10月2日(土)川口成彦フォルテピアノリサイタル

15時開演 フェニーチェ堺小ホール

2018年開催第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール第2位の川口成彦さんのフォルテピアノリサイタルシリーズ。
ちょうどこの日から始まったショパンコンクール本大会を聴く前に、ショパンの時代のピアノの音色を聴いてみたい、と出掛けたリサイタルでした。

この日は3回シリーズの2回目で、ショパンとショパン同時代の作曲家の作品をその当時のピアノ(フォルテピアノ)「プレイエル」とモダンピアノのファツィオリで演奏する、というプログラムでした。ちなみに1回目はシューベルトで「グレーバー」、3回目はモーツァルトで「ワルター」。

演奏の途中に音楽評論家の小味渕彦之氏による解説がありました。
プレイエルの時代には、既にスタインウェイがモダンピアノをつくり始めていたそうですが、その大きな違いは金属製のフレーム。金属を使うことで剛性が増し、弦に強い張力が掛けられるようになり、より豊かに鳴らせるようになったとのこと。

また、モダンピアノはアクション(鍵盤を押すとハンマーが弦を押す動き)が「ダブル・エスケートメント」となって、鍵盤を下まで押し下げなくても次の打鍵が可能になり、連打しやすくなったそうで、これはプレイエルと同時代の「エラール」ですでに発明されていたそうです。

ショパンはプレイエルもエラールも弾いていたそうですが、心身ともに充実した時でないとプレイエルは弾けない、と弟子に語っていたそうです。確かにその仕組みを聞くと、力が必要である一方、打鍵がそのまま音になってしまうため心情を表しやすい面もあるのだろうな、と思いました。

さて、その演奏ですが、まず1曲目はショパンのワルツ第2番「華麗なる円舞曲」。
その音色で一気に心を持って行かれました。
懐かしさを感じるまろやかなであたたかな音色。派手さはなく、サロンで、ピアノの近くで、ピアニストと近しい関係で聴いているような親しみを感じさせる音楽で、あぁ、ショパンはこの音色で作品をつくり、奏でていたのだと思うとこみ上げてくるものがあり、ちょっと涙腺が緩んでしまいました。

ショパンのピアノソナタ第2番(3楽章が「葬送行進曲」として有名)も弾かれましたが、聴いていると、音色の特徴はやはり高音域にあり、低音の響きはモダンピアノと同等の迫力がありました。高音域は「まろやか」とも言えますが、悪く言えば「ねばった」音で、長らく調律を怠っているモダンピアノの音に近い。このことからも、モダンピアノの透明感ある高音の響きは、強い張力によって生み出されているものだということが理解できます。

しかし、ショパンはこの音色しか知らずに作品をつくっていたわけで、現代のピアノで華やかに煌びやかに弾かれている自分の作品を聴いたら何と思うのだろう?と想像してしまいます。

もしくは、その当時どんどんと発展していくピアノを間近に、将来の音色を想定していたのかもしれない、などとも考えてしまうのでした。

途中ファツィオリで演奏された作品もありましたが、私としては全部プレイエルで弾いていただきたかった。そして、エラールの音色も聴きたい、とも思いました。次にその機会があれば逃さず聴きに行こうと思っています。

◇その他
初めてフェニーチェ堺に行きましたが、まぁ道順の分かりにくいこと!「ホールHPの案内図だけでたどり着けたら天才!」とTwitterで呟いたところ、地元の方から「分かりにくいと思う。堺市は文化芸術にあまり力を入れていない」旨の返信がありました。

確かに、ホールの正面(と思われる方向)は平置きの駐車場で、そこを横切る歩道はホールへのアプローチと思われますが、傍らは草茫々。とりあえずホールだけ建てました、の感でありました。

◇座席
最後列下手の端。見え方、響きは良好。ただし、すぐ後ろに座るホールスタッフの方がガサゴソ動く音が気になり、何度も振り返って(イヤミです)しまいました。

というようなことで、滅多に書かないアンケートにいろいろダメ出しを書いて出してしまったのでした。

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