14時開演 京都府民ホール アルティ
モーツァルトピアノソナタ全曲演奏会(全5回)3回目のリサイタル。
(↑チラシは郵送で受け取ったものしかなく、折り線が入っているのが悲しいです・・)
「華麗なる輝きを放ち」のタイトルの今回は全て長調。
前半は第2番ヘ長調、第6番ニ長調「デュルニツ」、後半は第11番イ長調「トルコ行進曲付き」、第12番ヘ長調。
モーツァルトのシンプルな美しさが際立つ名演でした。
少ない音で構成されているにもかかわらず天国的な美しさがあるモーツァルトの音楽からコロコロと粒立ちのよい美音でさらに美しさを引き出し、「こんなにも美しい音楽なのだ」と新たに発見させてくれる演奏。無垢の少年のように見える真央さんのキャラクターも相俟って至福の鑑賞のひとときでした。
先月から文芸春秋に寄稿されている真央さんのエッセイに、どのように作品と向き合い、音楽を追求しているかについてかなり詳細な記述がありました。
楽譜は各版をあたり、原典版、自筆譜からスケッチまでも目を通し、時間をかけて作曲家の意図を深く読み込む。その上で音楽はフレーズごと、小節ごと、最終的には1音ごとにどのような音色で演奏するべきか考え、こだわり抜いて音楽を作り上げているとのこと。
熟慮の結果のこの美音なのだと知ると、聴く際の心構えも変わってきます。今回はその一音一音を逃さず、じっくりと聴いてきました。
しかし、その佇まいからはそのような求道者感はまったく感じられず、天然自然に見えてしまうのがまた魅力なのですけれど。
舞台に現れ、椅子に座ると、サッと弾き始める。あまりのサッとさ加減にこちらの心の準備がついていかなかったりもしますが、爽快です。楽章間もあまり間を置かず、なかには殆どつなげるように弾いた曲もありましたが、1曲目の2楽章、短調のアダージョの前にしばしうつむいて間を置いていたのが印象的でした。
前回のモーツァルト演奏会では予習不足を痛感したので、今回は4曲とも何度か聴いてから演奏会に臨みました。(真央さん自身の音源が少なかったので、聴きすぎ=刷り込み、にならないように注意しましたが)
なので、1曲1曲に、そしてモーツァルトのピアノソナタ自体にも愛着が沸いてきました。なかでも今回好きになったのは12番、特に1楽章。ヘ長調が短調に変わるのにグッときてしまうのですが、ヘ長調の平行調=ニ短調、やっぱりニ短調にはやられる傾向です(笑)
満席の客席は8割方が女性。真央さんの出入りやお辞儀の所作に、いつもどこからか「可愛い」の呟きが聞こえてきます。聴衆だけでなく、ゲルギエフ、エッシェンバッハ、シャイー、と世界的なマエストロからも愛される真央さん。もっともっと世界に羽ばたいていってほしいですが、このような小規模ホールでの演奏会がなくなったりしませんように・・と願ってもいます。チケットが取りづらくなるのもツラいですが(笑)
◇アンコール
モーツァルト ロンド ニ長調k.485
ショパン ポロネーズ op.26-1
モシュコフスキー 15の練習曲op.72から第11番変イ長調
◇座席
2階最前列下手側。
ここのホールでの前回演奏会(黒川侑・佐藤晴真・阪田知樹トリオ)とほぼ同じ席。何より視界が良くて、双眼鏡で手元もペダリングも凝視できました。