19時開演 サントリーホール
ヨーロッパ旅行から帰国して1週間、今度はヨーロッパのオケ来日公演を東京で。今年は腹を括っています。
旅行では、ベルリン・フィル、シュターツカペレ・ベルリン(ベルリン国立歌劇場附属オーケストラ)と北ドイツのオーケストラを聴きましたが、今度は南ドイツのミュンヘン・フィル。
concerts-2024-MPhil_flyer
ブルックナー8番を大好きな指揮者トゥガン・ソヒエフで、ブルックナー直系のミュンヘン・フィルで聴ける。イヤーの今年、外せない公演でした。
ほぼ1年振りのサントリーホール。今回は2階席を取りましたが、大正解!音が減衰して聴こえる1階席とは全く異なり、ホール全体に広がる豊かな響きを全身で享受できました。かつ、前列がずらりと空いていたので、前から10列目でしたが視界は超良好(ベルリン・フィルも同様の位置で鑑賞したかった涙)。
ヴィンヤード型でステージを含めた空間容積が大きく、シャンデリアも煌びやかなこの祝祭的空間で聴く大編成のオーケストラはそれだけでも大変贅沢な気分になります。ちなみに後から記憶とスコアを照らし合わせて人数を確認したところ、94名でした。弦16型で、並びは1stヴァイオリン→2ndヴァイオリン→チェロ→ヴィオラ。一方金管類は、上手側コントラバスの奥にホルン→ワーグナーテューバ→テューバ→トロンボーン→トランペット、という並び。なお、青木尚佳氏は副コンマスで登壇されていました。
それにしても、素晴らしい演奏でした。
開放的で光に溢れた響き。1週間前に飛行機から見た雪を頂くアルプスと青い空。その南ドイツの風景が頭に浮かびました。彼らが見ている風景、ブルックナーが故郷のリンツで見ていた風景はこれだったのではないかな、と。
ソヒエフ氏は、タクトを持たず、やわらかく全身を使っての指揮。フレーズ終わりに入れる矯めや揺らぎがなんとも魅惑的で、思わずこちらも体が反応してしまいます。オケも聴衆もまとめて美しい世界に連れて行ってくれるような、そんな指揮でした。やっぱり大好きトゥガン・ソヒエフ!
それにしても、上手いオケというのは、上手い奏者の集まりなのだな、と当たり前のことを再認識。まず最初に目を瞠ったのは、1楽章の3番フルートの明瞭なソロ(ネトレプコ似の美女)だったのですが、その後の首席(こちらは男性)の繊細な音色も素晴らしいものでした。
体格も立派な首席ホルンの堂々たる響き。その他金管の輝かしい咆哮。ティンパニの切れの良さ——と挙げればキリがありません。
予習で同じくミュンヘン・フィルのチェリビダッケ指揮の演奏を聴いていたのですが、テンポ遅めといわれるこの演奏とほぼ同様だったようです。実は帰りの新幹線の時間が少々気になり、3楽章の始めと4楽章の始めに時計を見たのですが、3楽章が19時40分過ぎ開始、4楽章が20時10分過ぎ開始、終演20時41分(←これはスマホ)。遅いとは全く感じなかったのですが——それは演奏自体が充実していたことによりますが——この作品を味わうのに適したテンポ感であったと思います。
煌びやかなサウンドと優れたアンサンブル、心地よいテンポ感。ずっと終わらないで欲しい、と感じました。とくに3楽章アダージョ冒頭の陶酔的な美しさ。これほどまでに美しい音楽があるのか、と思いました。
そして、終結部「ミレド」のテンポ感も「それです!」。マエストロが手を完全に降ろしてから拍手が起こるまでの静寂時間も完璧でした。ここまで含め完璧な結び。素晴らしかった。
ブルックナー・イヤー、最高の鑑賞体験。午後年休を取得してのトンボ帰り東京行でしたが、行ってよかった。これはずっと記憶に残り続けると思います。
ちなみに、事前に何度もスコアを見ながら聴いて予習したことをここで告白。ますます深まるブルックナー沼。
◇アンコール
なし。当然。
ホール出発20時45分が最終新幹線に乗るタイムリミットだったので、カーテンコール中に退出。
関西から来られていた方と、終演後に時間があれば、と連絡を取っていたのにそれも叶わず残念(ぜひ語り合いたい方だったので)。オークラなどに泊まり、ゆったり余韻を味わって翌朝ホテルの朝食を楽しんでから帰ってきてもよかったかなー、それくらいの価値はある演奏会だったのに、と帰りの新幹線で少々後悔。
◇座席
2階下手側10列目。大満足の座席。サントリーもやっぱり2階席以上です。