2023年10月22日(日)クラウス・マケラ指揮/オスロ・フィルハーモニー管弦楽団 ピアノ辻井伸行

14時開演 フェスティバルホール

首席指揮者クラウス・マケラ氏率いるオスロ・フィルの来日公演。

昨年のパリ管との来日公演が衝撃的に素晴らしかったので、今年も発売と同時にチケット入手。

開始のファンファーレ的なショスタコーヴィチの祝典序曲。
マケラ氏のキレのある指揮、管類の強靭な響きは祝祭感満載、清々しい青空が思い浮かぶような演奏で、期待感が高まります。

続いては辻井伸行さんをソリストに迎えての同じくショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番。この作品を生で聴くのは2回目ですが、こんなにいい曲だったのかと再認識。

海外での実績も着実に積み上げておられる辻井さんはもうベテランの佇まい。昨年、読響大阪定期で拝見した際、体格の割に手が大きく指が長い、と思ったのですが、その長い指から強音、繊細な美音が次々と繰り出される様を見るのは痛快でした。1楽章の連続する強音の迫力が凄い。こんなに力強い音が出せるピアニストでもあるのだと知りました。そして、緩徐楽章の2楽章の抒情的な美しさ——芯の強さを感じる透明度の高い弱音も辻井さんの魅力。それを堪能できました。3楽章のハノンのパロディはお見事!

後半はリヒャルト・シュトラウスの「英雄の生涯」。
実は、開演時にコンサート・マスターが女性であることにニヤリとしてしまったのですが——第3楽章に相当する「英雄の伴侶」の主題はヴァイオリン・ソロによって演奏されるので、女性の方が見た目から入りやすいのです(リムスキー=コルサコフ「シェヘラザード」も同様)。そのコンマス、サラ・クリスティアン氏による艶やかなヴァイオリンは素晴らしく、これが聴けただけでも大満足でした。

「英雄の生涯」を聴くのは、前述の辻井さんご出演時の読響公演以来(指揮はS.ヴァイグレ氏。辻井さんと「英雄の生涯」の組み合わせは2回目ということになります笑)。

実は(と何度も書いていますが)あまり得意でないR.シュトラウス。「説明し過ぎ」感が強いのと歌える旋律が乏しいので好きになれないのですが、今回はマケラ氏の指揮だし!と期待していたのですが——冒頭の低音の響きなどには魅せられはしたものの、終盤の「英雄の業績」あたりでだんだん意識が遠のいていってしまい——何度も予習で聴いてから臨んだのですが、やはりダメでした。マケラ氏のせいではありません。私の好みの問題です。

オスロ・フィルはもちろんノルウェイのオーケストラですが、今回の曲目によるものなのか、その響きにとくに大きな特色はあまり感じられず、普通に上手いオーケストラ、という感じに聴こえました。

いわゆる「メジャー・オケ」との違いということで感じたのは(見た目ですが)、東洋人の少なさ。フルート首席とオーボエに中国系の方がいただけであとはすべて西洋人。自国人が多くを占めるオーケストラなのかもしれません。

この大阪公演は「Aプログラム」だったのですが、私としてはフィンランド出身のマケラ氏が振るシベリウスの2番と5番の「Bプログラム」を聴きたかった(昨年のアンコール「悲しきワルツ」は素晴らしかったのです)。しかしBプロはサントリーと芸劇の2公演のみ。大阪でシベリウスのみだと客が呼べない、と判断されたのであればちょっと淋しいです(ちなみにAプロは他に静岡、名古屋、熊本とサントリー)。

それにしても、マケラ氏の指揮は溌溂とし、歌わせるパートへの指示も明確で、「こういう音楽だ」ということがこちら観客側にもよく伝わってくる。ときに跳び上がったりもし、躍動感あふれるもので、見ているだけでも魅了されます。

2027年にコンセルトヘボウの首席指揮者に就任することが昨年に発表されており、20代にしてすでに巨匠への道が開かれている稀有の才能。聴衆が求める「スター」降臨です。

◇ソリスト・アンコール
グリーグ:抒情小曲集より「トロルドハウゲンの婚礼の日」
オスロ・フィルなのでノルウェイの作曲家グリーグの作品。読響での反田さんに続き、またもや聴くことができました!

◇オーケストラ・アンコール
J.シュトラウスⅡ:歌劇「騎士パズマン」よりチャールダーシュ

◇座席
2階最前列のほぼ中央。
後ろの2列目には空席が多く、他にも空席が連なるエリアがいくつかあり少々残念。

◇その他
マケラ氏の辻井さんエスコートがスマートで素晴らしい。左腕に掛けられた辻井さんの右手にご自分の右手を重ねておられて、その思いやりを感じられる所作に惚れ惚れ。手を触れ合うことによる緊張緩和や信頼感醸成といった効果もあるのでしょう。所作のひとつひとつが美しく、それに意味もある——天性の指揮者。

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