2024年10月11日(金)原田慶太楼指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団 ソワレ・シンフォニーvol.24 ピアノ小曽根真

19時開演 ザ・シンフォニーホール

原田マエストロによるアメリカンプログラム。

マエストロが勢いよく指揮台に飛び乗ると同時に始まった「キャンディード」序曲(これはリハでタイミング合わせをしていたのでしょうか?)、キレッキレの音楽が立ち上がり、いきなり期待が高まります。やはりアメリカの音楽はこうでなければ!

開演前に原田マエストロによるプレトークがあり、プログラムについての解説が聞けたのですが、ガーシュウィンとガーシュウィンに影響を受けたバーンスタインを組み合わせたとのこと。どの作品もキャッチーなメロディとリズムで、大いに楽しめるものでした。

「ウエストサイド物語」の途中では、マエストロが客席を振り向き、観客にフィンガースナップ(指パッチン)を要求。指パッチンは難易度高いので手拍子となりましたが、参加型演奏会は楽しいものです。初めて生で聴いた「パリのアメリカ人」、男性打楽器奏者お二人が4本並ぶタクシーホーンを鳴らしていたのですが、その真剣な表情は微笑ましいものでした。

しかしなんといっても、この演奏会のメインは最後に演奏されたガーシュウィン「ヘ調の協奏曲」。小曽根さんに「ラプソディ・イン・ブルー」をお願いしたら断られた、とのことで、代わりに演奏されたのがこの作品でした。

でもこの作品が聴けてよかった。確かに「ラプソディ・イン・ブルー」ほどキャッチーではないけれど、クラシックを聴き慣れた耳で聴くと、いかにガーシュウィンが天才であったか、を感じさせるものでした。ガーシュウィンが米国滞在中のラヴェルに作曲を教えて欲しいと頼んだ際、「あなたは既に一流のガーシュウィンなのだから、二流のラヴェルになる必要はない」とラヴェルが断った、というのは有名な話ですが、それを思い出しました。

1楽章の始まりのあたりは、ラヴェルの両手の協奏曲を彷彿とさせる音楽だったのですが、こちらの方がラヴェルより初演が6年早い。影響を受けたのはラヴェルの方だったのかもしれません。しかも、この作品はオーケストラ・パートもすべてガーシュウィンの手になるもの。これを聴くと、前述のラヴェルの言葉の説得性を感じます。

ちなみに、ガーシュウィンは超多忙な作曲家(メロディ・メーカー)だったため、自らオーケストレーションを行うことは少なかった、とこれもプレトークでのお話。ラプソディ・イン・ブルーも、元はジャズのビッグバンドの編成で、のちにファーディ・グローフェによりオーケストラ用に編曲されたものなのだそうです。

と、作品はもとより、なんといっても小曽根さんの演奏が素晴らしい!
確かな質量感のある打鍵、明快なフレージングはジャズマンを感じるもので、もちろん強音速弾きの迫力も凄いのですが、弱音の粒立ちも非常に美しい。うーん、やっぱりさすがです。ふと、小曽根さんでラヴェルの両手が聴きたい、との願望が頭をよぎりました。

あまりの迫力、素晴らしさに1楽章が終わったところで拍手が起きました。知らない人が手を叩いたのが発端?私はこれ幸いと乗じたのですが、ここでマエストロが再び客席を振り返り「(拍手をしても)だいじょうぶ!」と一言。このコミュニケーション能力の高さよ!小曽根さんもなにか仰っていて(2階席で聞き取れず)、もはやライブのノリ。楽しい~!

大迫力で3楽章が終わると、客席からは盛大なBravo!
アンコールは、ジャズのスタンダード・ナンバー「Someone to watch over me」から即興演奏を経て、協奏曲のコーダを再び。途中までしれっと指揮台に腰かけてピアノを聴いていたマエストロ、コーダの直前で指揮台に上がる、というこれも憎いパフォーマンス。このあとは熱狂的なスタンディング・オヴェイションとなりました。

原田マエストロと小曽根さん、アメリカン・プログラムを聴くのに日本人で最高の組み合わせではないでしょうか。演奏技術とコミュ力と。楽しませていただきました!

◇アンコール
ガーシュウィン:Someone to watch over me~Liza~ヘ調の協奏曲コーダ

◇座席
2階最前列下手側

 

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