2022年8月5日(金)飯森範親指揮/日本センチュリー交響楽団第266回定期演奏会 サクソフォン上野耕平

19時開演 ザ・シンフォニーホール

今シーズンのセンチュリー定期ラインナップ随一の「挑戦的プログラム」の演奏会は素晴らしいものでした。

ヒンデミット2作品とソリストに上野耕平さんを迎えたジョン・アダムズ「サクソフォン協奏曲」。

どちらも現代音楽に属する作品で、私としては進んで聴こうとは思わない類の音楽です(スミマセン)。とは言っても、何も把握せずいきなり生で聴くのは勿体ないので、いつものようにSpotifyで一応サラっと予習しました・・ふぅん、割と面白いな、と思う部分もありつつ、聴き終わった後は「で?」という感想(笑)。

これはきっと客入りも少なめで、今日も視界良好に違いない、と思って会場に入ったところ、予想に反して大入り。上野さんの人気と知名度によるものでしょうか?若手演奏家をフィーチャーしたセンチュリーの今期の演奏会はどれも大当たり。企画力が素晴らしい、と改めて感じました。

1曲目のヒンデミット「ウェーバーの主題による交響的変容」は、冒頭から華々しい音楽で、飯森マエストロの明確なタクトさばきから現れるキレのよい音楽が素晴らしい。これは聴き応えのある演奏会になる、と期待が膨らみました。

そして2曲目、上野さんのアルト・サックス独奏によるアダムズの協奏曲。
上野さんを生で聴くのは初めてでしたが、まずホールの空間全体をふわりと圧する音の響きが素晴らしい。オーケストラをバックにしたサックスを聴くのも初めてでしたが、この組み合わせは音量バランスや音色的にも「あり」だと感じました。オーケストラの中に同類の楽器がなく(クラリネット族が近いけれど、音質が全く異なる)、音色が際立つのがコンチェルトに向いていると思ったのです。もちろん高い演奏技術があってのことですが。

ジャズのアドリブのような掴みどころのないサックスの独奏・・跳びまくる音型、長いフレーズ、変拍子・・それが整然とした指揮に導かれたオーケストラと実にきっちりと組み合わさって進んでいくので、その超絶巧みなアンサンブルには感嘆とともに快感を覚えました。Bravo~!

休憩を挟んで、後半は再びヒンデミットで「画家マティス」。
この作品についての解説にはどれも冒頭「マティスとは、アンリ・マティスではなく、16世紀の画家マティアス・グリューネヴァルトのことである」と書いてあります。はい、私もご多分に漏れず、アンリ・マティスだと思っていました。この題名、紛らわしい・・。誤解を招いたり、作品の本質と異なったりする題名が付されているのは、クラシック音楽「あるある」ではありますが。

さて、これは、そのマティアス・グリューネヴァルトが描いた祭壇画の3つの場面をモティーフにした交響曲。標題音楽なのですが、予習が足りず場面を思い浮かべるところまでは至らなかったのですが——しかし、この音楽も前述のように、まず飯森マエストロの指揮が素晴らしく、そこから溢れるオーケストラの響き、そして管楽器のソロがどれも美しくて惚れ惚れ。これぞ、オーケストラを生で観て聴く愉しみです。

カーテンコール時、拍手を手で制したマエストロがひと言、「今回は難しいプログラムでしたが、いかがでしたか?」
いやー素晴らしかったです! 存分に楽しませていただきました!

「進んで聴こうとは思わない」作品でも、こうして聴きに行って楽しめるのは、定期会員ならでは。定期会員になり、そのオーケストラの「おすすめ」を鑑賞することは、自分の中の幅を拡げられて、やはり良いものだな、と感じた演奏会でもありました。

◇座席
1階中央付近の定期マイシート。今回は前席にバッチリ座られていて、しかも前後ずらしのない配置の座席なのでマイ視界大いに遮ぎられ。左側が空席だったので、左に傾いた姿勢で鑑賞、翌日頸が凝ってました・・。

◇ソリストアンコール
なし。実は上野さん、譜面台に用意していたそうですが、コンチェルトが終わった後の雰囲気を変えたくなくて、敢えて演奏しなかったとのこと。その気持ち、わかります。

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