2024年7月14日(日)髙木竜馬 ピアノの森 ピアノコンサート2024 Summer

14時開演 いずみホール

以前NHKで放映されていたアニメ「ピアノの森」。
その登場人物のひとり、雨宮修平のピアノ演奏を担当した髙木竜馬さんが、アニメで採り上げられた作品を中心としたプログラムで行うリサイタル。

ショパンコンクールに挑む若者たちを、彼らをとりまく環境とともに描いたこのアニメを毎週(録画で)楽しみに見ていたこともあって足を運んだのですが、この「ピアノの森コンサート」は今回で既に4回目とのこと。
比較的親しみやすい作品でのプログラムだったので、夫と一緒に出掛けました。

プログラム冊子には、作品ごとにアニメのどの登場人物がどのシーンで弾いたかということと、簡単な解説が添えてあったのですが、竜馬さんのトークによる解説が付け加えられ、これが鑑賞にあたってのよい助けになりました。「命より大事な台本」とか仰っていたけれど、ピアニストの記憶力でその台本は殆ど見ず、ユーモアを交えながらの分かりやすい解説。明るく親しみやすい竜馬さんのキャラクターはこのようなコンサートにはぴったりです。

いわゆるファミリーコンサートに類する演奏会なので、客層も子ども連れが多かったのですが、ショパンのバラード第4番やスケルツォ第2番といった大曲も含まれ、充実のプログラムでした(なので聴きに行ったわけですが)。

メンデルスゾーン「厳格な変奏曲」は初めて知った作品でしたが、聴き応えあるもので、これが聴けたことがまず収穫。かつピアノのテクニックが冴える作品でもありました。

竜馬さんのピアノは、弱音の優しい美音から力感あふれるフォルティッシモまで、ダイナミック・レンジの幅が広く、また指が手がよく回ること!特に終曲「英雄ポロネーズ」の後半、左手オクターブ上下行連打(ミ→レ♯→ド♯→シの鬼のような繰り返し)は、これまで聴いてきたピアニストの中で間違いなく最速。「凄い、人間じゃない!」というレベル。

一方、前半に弾かれた「子犬のワルツ(作品64-1)」での解説では、「『変ニ長調』という調性には「手の届かないものへの憧れ」というイメージがあり、ラフマニノフもよく使っていた」(パガ狂第18変奏もこの調ですね)という話とともに、「『作品64』はかなり晩年のもので、同時期には『舟歌』やソナタ第3番などの傑作があり、ジョルジュ・サンドとも別れた後でショパンは死期を感じ始めていた頃であった」という話も。それを知って聴くと「子犬」には違った景色が見え、竜馬さんの美音と相俟ってウルっときてしまいました‥子犬でウルっと——これだけでも収穫でした。

といったことで、期待以上の充実した演奏会でした。
ピアノリサイタルでいつも思うことではありますが、改めて現在のピアニスト豊穣を認識。今の時代に聴衆でいられてよかったです。

と、しかし、前述の客層ゆえ客席の静寂度は低く、とくに子ども客がずっと咳をし続けていたのがかなり鑑賞の妨げ(連れてくる親に問題あり)。コンサートの趣旨と演奏内容・レベルが乖離しているようにも感じました。最初から判っていたことではありますが、もっと耳の肥えた聴衆で鑑賞したかった演奏会でもありました。

◇アンコール
ラフマニノフ:前奏曲「鐘」
グリーグ:抒情小曲集より「夜想曲」

◇座席
N列下手通路側。ここのホールのアラウンド・マイ指定席。

タイトルとURLをコピーしました