2023年12月22日(金)亀井聖矢ピアノ・リサイタル

19時開演 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ

亀井聖矢さんの演奏を初めて生で聴きました。

少年時代からの数々の輝かしい経歴、そして昨年にはロン=ティボー国際音楽コンクールで第1位を受賞した亀井さん。

2025年のショパンコンクールへの挑戦を公言されており、このリサイタル・ツアーはオール・ショパン・プログラムによるもの。ショパコン三次予選同等の内容で、着々と準備が進められているという印象でした。

近年優れた若手男子ピアニストが続々と登場していますが、亀井さんはルックスに加えトーク・センスまで兼ね備えていて、「ここに極まれり」の感があります。

体を大きく使った演奏で、冒頭「華麗なる円舞曲」として知られるワルツ変イ長調Op34の1から次の曲に入る際の体勢で「Op34の2」が察知できました。次の演奏を予感させる観客の巻き込み方はカントロフを思わせるところもあります。音色は太く強靭。繊細な弱音を聴かせるタイプではなく、豊かな音量と超絶技巧で圧倒するパワー系のピアニストだと認識しました。

終曲のピアノ・ソナタ第3番は、その特長が発揮されていて大迫力。
アンコールではマズルカに続き、英雄ポロネーズが演奏され、客席は大いに沸きました。やはりこの作品は若者の力感あふれる演奏で聴きたい。その聴衆の願望を叶えてくれるピアニストです。

そして聴衆を沸かせる素質がある。同程度の演奏技量を持っていても、それがある人とない人がいるのです。その素質を「タレント性」あるいは「スター性」と呼ぶのかもしれません。

鳴りやまぬ拍手に応えて、「ラ・カンパネラ」。これは冒頭部分で歓喜の拍手が起こりました。弾き終わると、総立ちの観客に笑顔で相対しつつ片手でピアノの蓋を閉めるパフォーマンス。その挙措はもう既にベテランの域です。

ところで演奏を聴きながら、今度はがっつりとオーケストラと絡むコンチェルトを聴きたい、と思ったのですが——来年にはいずれもセンチュリー響で3月にプロコフィエフ3番、12月にブラームス2番と既にチケット入手済みなのを思い出しました(笑)。どちらも重量級。楽しみです!

◇アンコール
ショパン:マズルカOp.59-3
ショパン:ポロネーズ第6番変イ長調Op.53「英雄」
リスト:「ラ・カンパネラ」

◇座席
1階11列目上手側。
実は行けなくなった友人から譲ってもらったチケットでした。僥倖。
今後はこのような小ホールで聴くことはできないかもしれない、貴重な機会でした。
以前藤田真央さんのリサイタルを聴いた時も感じましたが、このホールの上手側はピアノの音が丸く太く聴こえる特質があるようです。

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