2026年6月20日(土) アレナ・フロン指揮/京都市交響楽団第712回定期演奏会 ピアノ阪田知樹

14時30分開演 京都コンサートホール・大ホール

チェコの女性指揮者アレナ・フロン氏を迎えての京響定期演奏会。京都市とプラハ市の姉妹都市提携30周年を祝したオール・ドヴォルザーク・プロによる公演でした。

序曲「謝肉祭」、ピアノ協奏曲、交響曲第7番、というプログラムは、3年前にサントリーホールでチェコ・フィルを聴いたときと全く同じ。交響曲第9番「新世界」、第8番という超メジャーを避けて7番としたのでこうなっただろうと推察――ですが、私のお目当てはメインの交響曲ではなく、ピアノ協奏曲およびそのピアニスト、というのは3年前と同じ。ちなみにチェコ・フィル公演時のピアニストは藤田真央さん。指揮はセミョン・ビシュコフ氏でした。

滅多に演奏されない、と言われているこのピアノ協奏曲ですが、5年前の大フィル「ドヴォルザーク・セレクション」でも聴いたので、これで3回目。選んで聴きに行っているのもありますが、私的頻度で言うと高め。ちなみに大フィル時のピアニストは北村朋幹さん。これであと務川慧悟さんが弾いてくれたら、我が日本人ピアニストのグランド・スラム達成、といったところです(何やソレ?笑)。

話題が逸れましたが――まずは、そのピアノ協奏曲から。
やはり、阪田知樹さんは素晴らしかった。この協奏曲は、ドヴォルザークが書いたままの「原典版」と、その弾きにくさと「映えなさ」を改良した「クルツ版」、さらにその折衷版などがあるようですが、この日は「原典版」。リヒテルが録音したことで見直されてきた「原典版」ですが、そう、なんでも弾けてしまう阪田さんなら「原典版」でしょう、と演奏前から納得。

そして、その演奏は、鮮やかでどこもかしこも「映え」まくっていて、一体これのどこが弾きにくくて映えないのか全くわからない、美しさと迫力と、愉悦感(これは阪田さんの演奏でいつも感じること)を感じるものでした。

私の大好きな、1楽章の変ロ長調の第2主題、陽光の射す草原を駿馬が駆けていくような高音の煌めきと軽やかなリズム。その煌めきは2楽章の抒情性にも通じ、3楽章終盤に訪れる高速連打の超絶技巧。阪田ワールドを堪能。幸福感で胸がいっぱいになる鑑賞体験でした。

さて、ところで今回のマエストロ、アレナ・フロン氏(性別を分け且つ「知った風」の「マエストラ」、「コンサート・ミストレス」の呼称は好みでないので使いません)。2024年に南チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に就任し、チェコ史上初の女性首席指揮者であるとのこと。彼女の招聘は、京響の常任指揮者、沖澤のどか氏に因むものと思われますが、ところで沖澤さんが日本初かと思って調べたところ、松尾葉子さんが1999年にセントラル愛知交響楽団の常任指揮者になったのが初だったようです。

と、またまた話が逸れましたが、フロン氏はスラリと長身の美女で、プレトークでは穏やかな話しぶりでしたが、冒頭「謝肉祭」で指揮台に跳び載るや瞬時に獣のような鋭い表情に豹変(今回はP席でした)。その指揮動作は「剛毅」な印象。指揮棒を持つ右手と右腕、右肩は常に固定され連動しており――これは何かのメソッドなのでしょうか。強い表現には向いているけれど、柔らかい表情をつけるのにはやや不向きにも思えたのですが――その分左手の動きが雄弁でした。

後半の交響曲第7番は――私の集中力がピアノ協奏曲で尽きてしまったのか、はたまた前述の指揮により、楽章ごとのキャラクターの描き分けに明確さが感じられなかったせいなのか、少々眠気を誘われる演奏でした。少なくとも3年前にチェコ・フィルで聴いたときのような民族色は感じられず。指揮者がチェコ人、オケがチェコ人、どちらが「らしい」か、ではオケに軍配、といったところでしょうか。巨匠ビシュコフ氏に軍配かもしれませんが(それは少々酷かも)。

京響は、冒頭少々不揃い、ホルン不安定もありましたが、弦の艶やかさ、木管の清々しい響きなどは流石で、「美しさ」の際立つ演奏でありました。

 

◇ソリスト・アンコール
リスト:忘れられたワルツ 第1番

◇座席
P席下手側最前列。
発売日定刻にチケ取り参戦したものの、S席が必ずしも音響が良いとは限らないこのホール、あっちでもない、こっちでもない、と迷った挙句に、ピアニストの手元が見える一択で決めたのがこの席(目的達成)。結果最安席でお財布にも優しい。直接音がよく聞こえるので聞こえにくさは感じず。しかし響かないホールですな、と見渡しながらの感想。

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