9時開演 大阪ステーションシネマ
久し振りのオペラ・ライブビューイング。
大好きなワーグナー指環「ジークフリート」を観てきました。

「ジークフリート」と聞いただけで行ってしまうのですが、題名役がなんとアンドレアス・シャーガー!ということで、これは絶対に行かなければ!と年休を取り、しかし休みにも関わらず出勤日と同じような時間に家を出て、約5時間半参戦してきました。
アンドレアス・シャーガー氏は、一昨年ベルリン国立歌劇場で鑑賞した「影のない女」の皇帝役で、生で接した高音の伸びと声量に圧倒されました。現代最高の世界的テノール。ロイヤル・オペラへの出演は今回初めてだったとのこと。
さて、その感想ですが――やっぱりシャーガー凄かった!
素晴らし過ぎて、1幕の終わりで(ストーリーとは無関係に)既にウルっと来てしまい、これは現地で、怒涛のような喝采に交じって「BRAVO!」と吠えたかった。
声の強さだけでなく、スタミナも凄い!ほぼ出ずっぱりなのに疲れ知らず、まさにジークフリート。終演時のカーテンコールではカメラが揺れるほどの大喝采でした。
その他の歌手も素晴らしく、ミーメのピーター・ホーレ氏のコミカルな演技――ミーメは何だか憎めない人物で、殺されるのが残念(笑)――ヴォータンとの掛け合いの間の取り方の巧さ。つい乗せられて自分の知識の披瀝に夢中になり、相手の術中に嵌まる人物っているよなー、など。
このプロダクションは、もちろん神話の世界ではなく、しかし干渉の妨げになるほどの大きな読み替えではなく、といった演出。衣装は現代風で、アルベリヒはユニクロで調達可能と思われる黒Tシャツに黒スラックス。ヴォータンはマントなし、槍ではなく炭化したような木の枝を持っており、眼帯はなく義眼。この義眼、アップの映像で見るとなかなかの迫力でしたが、劇場で観る分にはわかりにくかったのでは?と思ったり。
最も奇抜であったのは、大蛇ファーフナー。もちろん?大蛇などではなく、カサゴのようなイガイガ状のキンキラキンのスーツ。財宝を身にまとっている設定でしょうか。ドクロのマスクはこれもなかなかの迫力でした。
しかし最も特徴的な演出は、歌手でなく役者によって演じられた全裸の老婆。これは前2作にも登場したらしいですが――エルダ、ジークリンデ等々指環に登場する様々な女性を表しているように思えましたが、2幕では羽をつけて「森の小鳥」を口パクで。なにしろ本当に全裸で、弛み切った老体を文字通り「さらけ出して」いるので、最初はギョッとしたのですが、その「あるがまま」の姿も次第に見慣れてきて――しかし、映像に映り込む時間が長く、目障りに思えることもしばしば。彼女の役割については考えないことにして見て(見させられて)いました。
休憩時、後席の男性客おふたりが「きれいなもん見ようと思って来てんのになぁ」と話されていて、同感、でした(笑)。
第2幕の大蛇の棲む洞窟は雪の降りしきる丘にぽつんと建つ小さな家(「ラ・ボエーム」の3幕のよう)、第3幕の燃え盛る岩山はお花畑となっていましたが、さほどの違和感はなく。
なにしろ、シャーガー氏をはじめ、歌唱が素晴らしく、Mo.パッパーノの運びが巧みで――細かいことはわかりませんが、生き生きと物語を感じさせる音楽。幕間にピアニストの演奏付きでマエストロの短い解説がありましたが、マエストロは何とも演技巧者で(ダスティン・ホフマンに似て見えたり)、「オペラ指揮とは演技なり」(今浮かんだセリフ)。
といったことで、こんなことを言ってはナンですが、演出はどうでもよいほど、音楽が充実したプロダクションでありました。
◇座席
ギリギリに行きましたが、客席はガーラガラ。10人いたかどうか?という盛況ぶりでした。私自身も随分久し振りでしたが――なにしろ映画館に行くこと自体、昨年同時期に「国宝」を観て以来――こんな状況では今後大阪での上映がなくなるのでは?などと危惧の念を抱きました。

