2023年9月22日(金)飯森範親指揮/日本センチュリー交響楽団第275回定期演奏会 ヴァイオリン神尾真由子 ピアノ高橋優介

19時開演 ザ・シンフォニーホール

3ヶ月振りのセンチュリー定期。
現代曲を中心に据えた攻めたプログラムでした。

1曲目は、ジョージアの作曲家カンチェリの「タンゴの代わりに」。5分に満たない短い作品ですが、瞬間的に大音量になったり、急に曲想が変わってタンゴが始まったり、トロンボーンが音にならない「スー」という風音を出したり・・と冒頭に「ぶちかまされた」感で始まりました。「今日はこんな感じで攻めていきます」との宣戦布告のようでもあり(笑)

次に演奏されたのが、ヴィトマンのヴァイオリン協奏曲。
これはバリバリの現代曲で、予習の段階で深入りすることはやめました。分からないものは分からないので(笑)。

カンチェリは1935年生まれ(2019年没)で、ヴィトマンは1973年生まれの現役。しかし、私の拙い知識と感覚からすると、ヴィトマンの方がもっと現代音楽が盛んだった前の時代の作曲家のように思えます。調性がない訳ではなさそうですが、なにしろヴァイオリンが超高音の超絶技巧盛り盛りの作風で、よくこんな音楽を演奏できるなぁ、と、ひたすら感嘆の思いで神尾さんの奏でるヴァイオリンを観ていました。

予習の際に、先日のカフェ・モンタージュの高田さんのプレトークを思い出しました——リゲティが一時創作していた電子音楽にはある種の郷愁?があり、思い出したのが電話のプッシュ音やFAXの送信音、というお話(実際にスマホで聴かせてくれました)——だったら差し詰めこのヴィトマンのヴァイオリンの超高音は「歯医者の歯を削っている音」。聞きたくないですよね(笑)。

なので、覚悟して鑑賞に臨んだのですが——実際に見て聴いてみると、そこまでの拒絶感はなく、ただただ限界スレスレだろうと思われる超高音の技術に見惚れて、聴くというよりその演奏の手元ばかりに意識が集中してしまいました。かなりの「非日常」体験ではありました。

休憩後は再びカンチェリの作品で「弦楽オーケストラ、ピアノとパーカッションのための『SIO』」。「SIO」とは、そよ風という意味だそうで、これはかなり好きな音楽でした。アルヴォ・ペルトを連想してしまったのですが、寂寥感のある音楽で、時おりぐっとつかまれる美しい旋律もあります。ピアノが和音のみを単発的に奏でるのですが、そのあとの静寂が独特。その世界観に自分の中の何かがシンクロするような気がしてきます。これは(もうそんな機会はないかもしれませんが)また聴いてみたいと思いました。

締めくくりはシベリウスの最後の交響曲、第7番。
実は6月の定期同様、その前までの演奏でかなりお腹いっぱいになっていたのですが(笑)、単一楽章であるこの作品、北欧の雄大な景色、澄み切った空気、といった情景を思い浮べながら(北欧にも行ってみたいです)、堂々とした演奏を堪能させていただきました。

この「満腹感」、今年聴いた演奏会で何回か経験しましたが、これは時間的長さによるものではなく、内容によるものなのだと(量よりカロリー?)と、この日悟りました。

◇ソリスト・アンコール
パガニーニ:24のカプリースop.1 第24変奏。「パガニーニの主題」の本家。アンコールはなくてよい、と思うほどの協奏曲の演奏だったのですが、超絶技巧のアンコールは超絶技巧。さすがです。

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