2022年6月11日(土)現田茂夫指揮/日本センチュリー交響楽団 豊中名曲シリーズVol.22 ピアノ務川慧悟

15時開演 豊中市立文化芸術センター 大ホール

ちょっとないくらいの感動でした。
務川慧悟さんのラフマニノフ ピアノコンチェルト第3番。

前日がダブルヘッダーだった上、この日は関フィルの定期とも重なっていて——来月定期に登壇する関フィルに行くのが筋?とかなり迷ったのですが、しかしやっぱり務川さんを聴きたくてこの公演に行ってしまいました。
でも、行ってよかった!大正解でした!

務川さんのピアノ。
切れ味鋭く鮮やか。オーケストラの咆哮にも全く負けない強く豊かな音量。正確無比なテクニック。
そしてなにより快感だったのが和音のザクっとした切れのよさ!日本刀で藁の束を一刀両断するが如くの潔さを持った音色で、この連続する和音の響きがとにかく耳に体に心地いい。こんな感覚は初めてでした。ずっと聴いていたい、終わらないでほしい、ラフマニノフの甘美で壮大な音楽と相俟って、途中こらえられず涙が滲んでしまいました。

現田マエストロの導くオーケストラも残光の輝きのように美しく、ロシアのロマンチシズムを存分に堪能しました。管楽器のソロもそれぞれに素晴らしく、センチュリーの響きはやはり美しい。

しかし・・また好きなピアニストが増えてしまいました(笑)
ピアニストを「発見」した場合、コンチェルトを聴いたら次はリサイタルを、と思うのがいつものパターンですが、務川さんは次もコンチェルトを聴いてみたい。それも古典派ではなく、超絶技巧と音量が存分に堪能できるロマン派以降の作品で。

といいつつ、アンコールのバッハの素朴で静謐な世界にも胸を打たれました。アンコールがバッハでよかった。「音の絵」なんか弾かれたらアドレナリン上昇し過ぎて夜眠れなくなるところでした。いや、もうすでに眠れない?

実は務川さん、この3番を弾くのは初めてだったとのこと。
ピアノコンクールのファイナル定番曲なのに、ちょっと意外な気もしましたが、初演ならではの新鮮さや意気込みもこの感動の一要素であったのかと思います。
ちなみに、来阪直前には親友の反田恭平さんがオケ部分を弾いて練習を手伝われたそうで、そんなエピソードにもキュンとしてしまいます。

この日はひとりで聴きに行ったので、この大きな感動を声に出してアウトプットすることもできず、どうしようもない気持ちを抱えたまま帰途に着きました。
そして最寄駅まで帰ってきたものの、そのまま家に着いて日常生活に戻りたくなくて、駅近くのコーヒーショップに入りしばらく呆然。

こんな状態になるのは、かつてブーニンのリサイタルでアンコールの「月の光」に心を奪われ、友人とふたり最後の客になるまでホールに居続けた二十歳のあの日以来。いくつになっても、ここまで感動することがあるのですね。

ところで後回しになりましたが(笑)、この日はロシア・プログラムで、最初にムソルグスキー(リムスキー=コルサコフ編)の「禿山の一夜」、コンチェルトの後に休憩があり、後半はプロコフィエフの「ロメオとジュリエット」(抜粋)。どちらもCMやフィギュアスケートなどに使われるキャッチーなメロディを持つ作品で、プログラム全体としても魅力的でした。

ロメジュリ聴きながら、「子どもの頃に聴いていた『ピーターと狼』みたいだけど、どっちもプロコフィエフかー」などと考えていたら、途中本当に「ピーターと狼」ばりにPAで俳優さんのセリフが入ってきたのでびっくり。そういう趣向のコンサートだったのですね(知らなかった)。しかしこれは要らなかったかも? ちょっと唐突だったし、そんな余計なこと(スミマセン)をしなくてもこの音楽は雄弁。それに今回の演奏会に限っては務川さんで大入りだったのですから。

◇ソリストアンコール
J.S.バッハ:フランス組曲第5番 ト長調 BWV816 第3曲サラバンド

◇座席
2階下手側前から5列目。
公演の4日前にセンチュリーに電話して取った席。S席は売り切れでA席。
豊中文芸センターは初めてでしたが、見え方も音響もよいホールでした。「ザ・日建設計」のデザイン(笑)。2階は急勾配で席前後にかなり段差があるので、前席と被る恐れは少ない。しかも私のすぐ前はミラクル空いていたので視界良好でした。

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