2024年1月12日(金)飯森範親指揮/日本センチュリー交響楽団第278回定期演奏会 ヴァイオリン三浦文彰

19時開演 ザ・シンフォニーホール

2024年は生誕200年のブルックナー・イヤー。その先陣を切ったセンチュリーの定期で第3番を聴きました。

まだニューイヤーコンサートが開催されている時期ではありますが、がっつりと「ザ・定期」のプログラムでした。

前半はソリストに三浦文彰さんを迎えたショスタコーヴィチ ヴァイオリン協奏曲第1番。
これが素晴らしい演奏で、今年初にして、もしかして最高のヴァイオリン演奏を聴いてしまったかもしれません。

三浦さんのヴァイオリンは強く細く、鋭利な刃物を連想するような音色で、これまで聴いたチャイコンなどの演奏では少々冷たい印象を持ってしまっていました。

しかしこの前衛的な作品との相性は抜群。
優れた演奏は作品の見通しをよくするもので、作曲家の生きた苦難の時代に思いを馳せつつ聴き入りました。高度なテクニックで快刀乱麻の如く進んでいく様は見事! どんなに速くても、どんな音形であっても、常に音程がバッチリ当たるのはもちろんのこと、艶やかな響きが完璧であるからこその渋い音色での憂いを帯びた表現も素晴らしい。3楽章の長大なカデンツァは呆然と聴き入るしかなかったです。

終演後は盛大な拍手とBRAVO!やはりこういう演奏の後はBRAVOが欲しい。コロナが収まってよかった、と感じた瞬間でもありました。

オケとソロ・ヴァイオリンとの相性も良く、協奏曲の演奏としても素晴らしいものでした。
ちなみにオケは対向配置、チェレスタは下手側、ハープ2台は上手側と分けて配置してあるのも音響的な演出として効果的。

金管類はテューバとホルンだけという珍しい編成で、チェレスタやハープが「美しくなく」用いられていたり、お馴染みのシロフォンが剽げた調子で入って来たり、ショスタコーヴィチらしさも楽しめる作品でもありました。

 

後半のブルックナー交響曲第3番。ワーグナーに認められた作品ということで、ブルックナー自身が「ワーグナー交響曲」と呼んでいたそうです。

この日は演奏機会の少ない「初稿」での演奏。
今回は殆ど予習はせず、4年前に尾高マエストロ/大フィルで聴いた際の記憶が微かに残っている程度だったので、え?こんなに長かったっけ?と思いながら聴きました。ちょうど1時間くらいの作品だと思っていたので、長い長い2楽章が終わった後、滅多にしないことですが腕時計を見て時間を確認しました。この時点で20時55分(演奏開始は20時10分頃)。

3楽章スケルツォは短めでしたが、4楽章もそこそこ長く——主題の明確さと華々しいコーダで長いとは感じませんでしたが——終演は21時20分頃。以前に聴いた「第3稿」よりも10分以上長かったようです。

これでは後に各楽章とも短く刈り込まれてしまっても仕方ないと思いつつ、でもその分センチュリーの美しい響きを堪能することができました。私はブルックナーには金管楽器の印象があるのですが、この演奏では弦楽器が前面に出ているように感じました。ヴァイオリンの艶やかな響きと、永江真由子さんのフルート(脚を骨折されていて車椅子での入退場)が特に美しく、印象に残っています。ちなみに弦は12-10-8-8-6の低弦厚めの編成でした。

残念だったのは、マエストロの両手が頂点にあるのに拍手が起こってしまったこと。その拍手は一旦収束し、マエストロの手が完全に降り切ったところで改めての喝采となりました。

◇ソリスト・アンコール
なし。ない方がよいと思ったのでよかったです。

◇その他
カーテンコールの後マエストロの短いトークがあり、「調べたところ、イヤーの今年、これが日本で初めてのブルックナー演奏だった」とのことでした。

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