2022年2月27日(日)川口成彦フォルテピアノ・リサイタル オール・ショパン・プログラム

14時開演 兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院小ホール

前回は堺のフェニックスホールで聴いた川口成彦さんのフォルテピアノ。今回は我が家から最も近い芸文センターで、しかもオール・ショパン・プログラム、というなんとも嬉しいリサイタルでした。

前回のピアノは「プレイエル」でしたが、今回は1820年に製作された「グレーバー」。

解説によると、ショパンがプレイエルを弾いていたのはパリ時代で、祖国ポーランドにいたころは、このグレーバーと同じ機構のウィーン式ハンマーアクションの「ブッフホルツ」を弾いていたとのことで、今回のプログラムはそれにちなんで主にその年代、つまり少年時代に作曲された作品で構成されたものでした。

このグレーバーは、サイズも小ぶりで音色もプレイエルより更に年代を感じさせるもので、どことなく可愛らしい印象。鍵盤数は両端それぞれに1オクターブ程度狭いように見えました。

最初は現代ピアノからかなり隔たりを感じる音色に少々面喰ったのですが、聴いていくうちに馴染んでくるもので、プログラム後半のエチュードやソナタでは低音部の迫力ある響きも楽しむことができました。

この響きと音量で作曲した作品が、現代のブリリアントな響きと大音量のピアノで演奏され今の聴衆はそれが当たり前だと思って聴いているーーショパンに限ったことではないですが、作品の持つ普遍的な力を感じながら聴いた演奏会でもありました。

ショパン作品は元々好きでーー何といってもピアノ少女の憧れはショパンが弾けるようになることなのでーーその上、昨秋のショパンコンクールであらゆる作品を聴きまくったこともあり、今回はとても親しみの持てるプログラムでした。なかでもエチュードop.25-5番は特に好きで、生で聴けたのは嬉しかった!ちなみにこの作品、楽譜をダウンロードしたのですが、弾いてみる気になれないほど運指が難しい。エチュードなので運指の練習が本来の目的ではあるわけですが・・。オクターブ高速連打の10番に至っては楽譜を見る気にもなれません(笑)。それらの難曲をしなやかな指さばきで易々と弾きこなす川口さん。当たり前のことではありますが、ピアニストってすごいなぁ、と最近特にしみじみと感じています。

このピアノには5本ものペダルがついていましたが、当時は様々な機能のペダルをつけて音色を変えて楽しんでいたそうで、現代のシンセサイザーにも通じるものがありますね。第1曲目を聴いたとき、ハープのように感じた音色はこのペダル操作によるものだったようです。

この日も双眼鏡で手元も足元もじっくりと拝見しつつ集中して鑑賞。マニアックな聴衆しか来ない類の演奏会なので、観客の集中度の高さも感じましたし、ステージを取り囲む形状のホールがその雰囲気を醸成していたようにも思います。

満席の四方八方の観客にお辞儀をされる川口さんは大変そうでしたが(笑)、その真面目で誠実なお人柄にも魅かれるものがありました。

◇アンコール
ショパンが7~8歳で作曲した(!)ポロネーズ第11番 ト短調

◇座席
下手側の最後列。音響はもちろん、視界も良い席でした。発売開始と同時にネットで取りましたが、みるみるうちに狙っているエリアの席が埋まっていき、結構焦りました(笑)

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