2022年4月24日(日)METライブビューイング「ナクソス島のアリアドネ」

11時上映 大阪ステーションシティシネマ

今シーズン3回目のメト・ビューイング鑑賞。
今回のメトのラインナップも観たいものが目白押しなのですが、その中のひとつ、リヒャルト・シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」に行ってきました。

鑑賞し終わった後の感想は「世界は広いなぁ」。
とにかく歌手が素晴らしくて、世界のトップ歌手が集うメトの優れたプロダクションに今回も感嘆しました。

演出もオーソドックスで分かりやすく美しく、なかでも衣裳デザインが素晴らしい。
道化師一座のパリアッチョそのもののカラフルな衣裳がとてもチャーミングで、アリアドネのクラシカルなドレスとの対比も美しい。

そして、今シーズンのメトのアイコンのようにもなっている、長い(高い?)スカートのドレスの3人の女性は妖精なのですが(この3人、「魔笛」のダーメ、クナーベ、或いは「指環」のラインの乙女へのオマージュでしょうか?)、スカートの内側は金属フレームで、その下に台車を取り付け、中に俳優が入って動かしているとのこと。この写真だけを見ると奇異な印象を持ちますが、妖精なので空中を漂っているのでしょうか?人間界のアリアドネとの位置関係がわかりやすく示されていて、かつとてもファンタジックで素敵でした。

さて、この作品は「劇中劇」になっていて、オペラを主催する大金持ちに仕える執事長が「悲劇的なオペラと道化師が登場する喜劇とを同時に上演しろ」という無理難題を押し付けられるところから始まります。「序幕(プロローグ)」がその現実世界。そして休憩を挟んだ後半が劇中劇の「オペラ」です。

「序幕」では、オペラの「作曲家」の見せ場が多いのですが、このズボン役メゾソプラノの演唱がまず素晴らしかった。映画女優のような美しい顔立ち、ソプラノかと思う艶やかな高音を聴いて思い出したのですが、3年前に同じくメト・ビューイングで観た「カルメル会修道女の対話」ブランシュ役のイザベル・レナードでした。来シーズンは「ばらの騎士」に出演とのことで、是非観に行きたいと思っています。

「オペラ」ではなんといっても、題名役アリアドネのリーゼ・ダーヴィドセン。2オクターブの音域で歌うアリアのコントラルトばりの低音の豊かさと高音の透明感。後半殆ど歌いっぱなしなのですが、まったく衰えないのがまた素晴らしい。バイロイトにもデビューした今年35歳、新たなドラマティック・ソプラノのスターです。ちなみに、今回つけていたティアラは、ジェシー・ノーマンもつけていたものだそうで、そのことがとても嬉しい、とインタビューで語っていました。

そして道化師一座の踊り子ツェルビネッタのブレンダ・レイの見事な芸達者ぶり。コロラトゥーラの妙技ーーかなり長く歌ったあとにコロラトゥーラを歌うので、相当にハードだと思うのですが、もちろんそんなことは感じさせませんーーに加え、蓮っ葉(だけど、かなり「真理」を語っている)でくるくると表情を変えるキャラクターのなんと魅力的なこと。

この3人だけでも「世界は広いなぁ」と思ってしまった次第です。

それにしてもよくできたオペラで、「悲劇と喜劇の同時進行」が見事に作品になっているのが素晴らしい。恋人に置き去りにされた不幸を延々と歌うアリアドネを、書き割りのすき間から覗いているカラフルな衣裳の道化師たちーーこれには、メトの会場の観客とともに我々映画館の観客も大いに笑いました。と同時になんともいえない幸福感が込み上げてきたのです。なんて幸せなオペラなんだろう、と。

リヒャルト・シュトラウスの音楽も素晴らしく、オペラという総合芸術の素晴らしさに満足感いっぱいで帰途に着きました。
やっぱりメトはすごいです。

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