2021年11月27日(土)ピアノトリオ 黒川侑・佐藤晴真・阪田知樹 Cl金子平

14時開演 京都府立府民ホール”アルティ”

ヴァイオリン、チェロ、ピアノのいずれの演奏家も「目当て」であるという、なんとも豪華な組み合わせでのトリオ。そして今回は特別出演で読響首席のクラリネット奏者、金子平さんが加わった編成でした。

佐藤晴真さんは先々週リサイタルに行ったばかりで今回で5回目。阪田知樹さんも是非聴きたいと思っていた人気ピアニスト。そして黒川侑さんは、以前TVで演奏を聴き、その研ぎ澄まされた高音に魅了されいつか生で聴いてみたいと思っていたヴァイオリニスト。その3人の演奏家が揃ったなんとも豪華なトリオで、これは行くしかない!と(笑)

実は阪田さんについては、生での初聴きはリサイタルかピアノコンチェルトが良かったなぁと思っていました。けれど、ラヴェルの三重奏冒頭の第一音を聴き瞬時にそんな思いは消し飛びました。滴る水を思わせる美音。ラヴェルの世界。一瞬で引き込まれてしまいました。これにヴァイオリンとチェロが加わることを思った瞬間、なんと贅沢な音楽体験だろうと幸福感が込み上げてきました。

黒川さんのヴァイオリン、これはもう「聴きたい」と思っていたそのままの音色で、透明で艶やかな響きが素晴らしい。そして晴真さんの完璧なチェロ!
アジアを想わせるラヴェル独特の節回しの音楽、その三重奏のあまりの美しさに涙腺が緩んでしまいました。美しいー!

後半の「世の終わりのための四重奏曲」は第二次世界大戦中、捕虜となったメシアンがそこで出会ったヴァイオリニスト、チェリスト、クラリネット奏者と演奏するために作曲されたものですが、ラヴェルの三重奏曲もこの作曲家が第一次大戦出征前に死を覚悟して作ったもので、今回のプログラムのコンセプトは戦争に際した作曲家の心情、といったものかと推察しました。

メシアンの作品、聴いてわかるかしら?と若干の不安があったのですが、冒頭クラリネットとヴァイオリンの鳥の鳴き声から始まり、描写に富んだ音楽だったのでなんとか(笑)世界に入っていくことができました。それになにしろ皆上手い!途中4者が揃ってユニゾンが長く続く部分はその完璧な一致に感嘆。

金子平さんのクラリネットがまた素晴らしく、長いフレーズを一定の音量を保ったまま全くブレなく吹き通しておられて圧巻。一呼吸で吹いていたのか循環呼吸だったのか?木管奏者の演奏技術の凄さを知った貴重な体験でもありました。

終盤近くの混乱を示す楽章も、それぞれの楽器の音色が素晴らしくなんとも美しいカオスで、世界の終わりがこんなに美しいなら見てみたい、と思ったほどでした。カオスに続く終曲「イエスの不滅性への賛歌」は、信仰の永続性かあるいは何もかもなくなってしまった大地の地平線でも示すのか、ヴァイオリンの単音が細く長く続いて終わるのですが、その間チェロを抱え首を垂れて聴き入る晴真さんがなんだか磔刑のイエス・キリストのように見えたのでした(かっこよかった!)

ところで終わってから気づいたのですが、このトリオの演奏会、今回が2回目だったのですね。そして既に来年12月10日には3回目が予定されています。これは是非行かなければなりません!

◇座席
2階席最前列の下手側。
2階席といっても、1階がそのままつながっていて通路を隔て1段あがっている形状。
このアルティホール、今回初めて訪れましたが音響がいいですね。響きすぎることもなく明晰に音が聴こえ非常に快く鑑賞できました。プログラムがマニアックなため心得のある客層で、気になる雑音が少なかったことも幸いでした。

◇その他
アルティホールは京都府公館と同じ敷地にあり、ホールに面して日本庭園もある京都らしい施設。椅子の張地も日本風(川島織物でしょうか?)でした。

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