2022年12月22日(木)鈴木優人指揮/読売日本交響楽団「第九」

19時開演 フェスティバルホール

読響の大阪定期演奏会 全3回の締めくくりは第九でした。

後ろで歌うだけでなく客席に座って聴くのも好きなので、第九はほぼ毎年聴きに行っており、今年はこちらに行きました。

この公演、なんといっても、新国立劇場合唱団による4楽章の合唱部分にちょっとした演出がなされており、これが大きな特色でした。

通常第九の演奏会では合唱団は最初から後ろに座っているのが殆どで、たまに3楽章の前に入場というのもありますが、この第九では3楽章の前にも、さらに4楽章の前にもソリスト・合唱の入場はなし。一体どうなっているのか?と思っていたら、4楽章のバリトン・ソロの直前でバリトン歌手のみがまず登場し、演説するが如くのソロを歌うと、それに続いて合唱が登場する、という運びになっていました。

オケの奏でる「喜びの歌」が聞こえてきたのでその場にやって来た、といった感のバリトンは人々を導くリーダー、合唱はそれに賛同し追従する民衆ーー第九をオペラ仕立てにしたような演出で、普段オペラに出演している新国立劇場合唱団ならではのステージング。これには「一本とられた」の感でした。登場の際の歩き方からしても洗練されており、マスクなし、S12、A12、T9、B9の合計42名の合唱は、声量も十分で美しく、各パートの旋律が明確に聴こえてくる「まるで別物」でありました。

バリトンのクリスティアン・イムラー氏は、プロフィール写真よりもかなりお年を召しているようでしたが、その「老将軍」といったルックスが説得力をもたらすものでした。声は年齢なりに渋め。イムラー氏を含め、ソリストのいずれもバロックを得意とし、バッハ・コレギウム・ジャパンと共演経験のある方々でしたがーーテノール、ソプラノは声量、高音の発声にやや難あり。ホールが大きく、オケの後ろという不利な条件ではあったものの少々残念でした。やっぱり第九のソロは、オペラをバリバリ歌っている声量豊かな歌手で聴きたいものです。

なお、ソリストの並びは下手側からS,B,T,A、合唱の並びはS,T,B,Aで、対向配置のオーケストラに合わせてあるようでした。

全体を通しては4楽章以外は特にこれといった特徴は感じられず、正統的で端正な演奏。1楽章ではテンポの共有ができていない不揃いな印象でしたが、楽章が進むにつれ徐々に読響の本領発揮。特に3楽章は鬼門の?ホルン・ソロを含め艶やかで美しかった。ティンパニ Bravo!

 

——余談になりますが、先日KEIBUN第九とセンチュリー/東京混声の第九を続けて聴きに行った友達が、「東京混声は見とって面白くないねん!」と言っていましたが、その気持ちがわかった気がしました。舞台いっぱいに並んだアマチュア合唱団を見ながら「そこのオバチャン寝るな!」などとツッコミを入れつつ人間観察をするのもなかなか面白いもので、日本の年末の風物詩はやはりこの手の第九かなと思った次第です。

ところで、鈴木優人氏は来期より関西フィルの首席客演指揮者に就任され、来年の第九を指揮されます。つまり来年は優人氏指揮で第九が歌える!ということで、関フィル第九の記事に書いた「来年も必ず登壇します!」の大きな理由はこれなのでした(笑)

◇座席
2階下手側の最後列、定期のマイシート。
会場は満席。ゆえにそれなりの雑音。冒頭優人氏がタクトを構えた瞬間、前方でアラーム音が鳴り、一旦腕を下げて待つ、という場面もありました。

タイトルとURLをコピーしました