2022年3月13日(日)広上淳一指揮/京都市交響楽団第665回定期演奏会

14時30分開演 京都コンサートホール 大ホール

広上マエストロの常任指揮者としての最後の定期演奏会でした。

当初プログラムはマーラーの交響曲第3番でしたが、コロナで児童合唱団が練習できないとのことで、2週間ほど前にプログラムが変更。変更後は、尾高惇忠の女声合唱曲集「春の岬に来て」から「甃(いし)のうへ」「子守歌」の2曲と、藤村実穂子さんソロのマーラー「リュッケルトの詩による5つの歌曲」、そしてマーラーの第1番「巨人」。

変更を知った当初は「また『巨人』ですか?」という思いもありましたが、結果的には良いプログラムだったと思います。(プレトークで「3番はリベンジします」とのことでした)

なにより藤村実穂子さんの歌がじっくり聴けたのが良かった。3番では出番は5~6分ですが、この歌曲は20分弱くらいあるので観客としてはお得感もありました。しかも藤村さんは他の日本での演奏会はキャンセルされたのに、この演奏会のためだけに2週間の隔離期間を受け入れてドイツから帰国されたとのこと。

その歌声は深く豊かで説得力のあるものでした。メゾ・ソプラノなので、低音部への称賛が多いですが、高音部の艶やかさも素晴らしい。低音も高音も美しく出せてこそのメゾなのだと改めて感じました。

「巨人」の演奏には、ものすごく「見通しのよい」印象を持ちました。昨年びわ湖ホールで聴いた際にいろいろ勉強したので、私の鑑賞能力が向上したのもありますが、各主題が明確に際立って聴こえ、複雑な印象は皆無。そしてなにより音が美しい。美しい音楽を堪能できた、と感じました。

マエストロの「ジャンプ」は殆どなかったですが、90度回転して第一ヴァイオリンやヴィオラに真正面から相対しておられたのには、やはり笑ってしまいました。

女声合唱の「春の岬に来て」。尾高惇忠氏は広上マエストロの師匠。プレトークでの話ですが、ピアノのレッスンで、マエストロは師匠に「面白い演奏だが、また来週聴きたくはない」と言われていたとか。どんな個性的な演奏だったのでしょう?聴いてみたいです(笑)。

それはさておき、この京響コーラス女声による合唱は、マスクの影響もあまり感じず、オケとのバランスもよく、美しい演奏でした。それと同時に抱いた感想は「きれいな声の上手いアマチュア」。先週びわ湖ワーグナーでプロ声楽家の合唱を聴いた記憶が新しいこともあり、発声法(ベルカント)が身についたプロの歌唱とアマチュアの歌唱の歴然とした違いを感じました。別物、といっていいかもしれません。

さて、以上が主な感想なのですが・・実はこの演奏会、なんとも残念な思いで聴いていたのです。

音が小さい!聴こえない!

マーラーなのでオーケストラ全体が見渡せる席で鑑賞したい、と3階席正面にしたのですが・・この席に聴こえてくるのはかなり減衰した響きで、殆どが反響音。直接音が届いて来ず、迫力に欠ける。
オーケストラの音も藤村さんの歌声も、本来ならばもっと強く華やかであるはずなのに、というなんともいえないもどかしさがありました。通常どこのホールでも、この位置は申し分なくよく聴こえるものなのですが・・このホールは「音響がいい」とか言われていますが、ホントでしょうか?

というのを、実は最初に感じたのは開演30分前に始まったプレトークでのこと。
楽団長でもある門川大作京都市長がいつもの羽織袴でマエストロに花束贈呈とスピーチされていたのですが、このときからマイクを通しているのに何を喋っているのか聞き取れない。その状態は、その後 音楽評論家の奥田佳道さんと事業部の川本さんが加わった3人でのトークでも同じで、トーク自体もいまひとつ要領を得ないものだったので、なんだか「グダグダ」の感。このホールはPAがよくないのかな?と感じたのですが、本来の生音も納得できるものではありませんでした。

しかし、そんな状態でも、広上マエストロの最後の定期を聴きに来た満席の観客からはあたたかい雰囲気が感じられて、これはやはり京響ならでは、と感じました。

カーテンコール後、マエストロのスピーチと花束贈呈、それにこの日で退団されるオケ奏者お二人にも花束贈呈があり、その後アンコールとして「子守歌」が再度演奏されて終演。

私としては少々複雑な気持ちで会場を後にしたのでした。

◇座席(前述しましたが・・)
3階席前から3列目、中央ブロック下手側。視界は良かったです(笑)

 

タイトルとURLをコピーしました