2020年7月9日(木)秋山和慶指揮/日本センチュリー交響楽団第247回定期演奏会

19時開演 ザ・シンフォニーホール

コロナ自粛明けから、早や3回目のコンサート。
「コンサートに行く」ことは、一般的には「非日常」なことではありますが、その非日常がある程度日常に組み込まれている人間としては、「日常が戻ってきた」と言えますね。贅沢なことですけれど。

このコンサート。
もう、なんといってもチェリスト「佐藤晴真」!
素晴らしかった!

心の穴にすっと入り込んでくる、「あぁ、これだ!」というような感覚。鍵穴にぴったりの鍵が差し込まれるような快さ。
ときおり、こういう演奏・演奏家との出会い、あるいは発見があるのです。
これだからコンサート通いはやめられません。

ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第2番。モノローグのような独奏で始まるこの楽曲の、その第一音が鳴った瞬間に、もう引き込まれてしまいました。チェロの音色が素晴らしい!
内側から絶えず光を発しているような明るい音色。そして、常にオーケストラを凌ぐ圧倒的音量を有する音。その魅力的な音色に導かれ、まるで物語を読み進めるように「聴き進めて」行く感覚、こんな音楽の聴き方をしたのはおそらく初めてのことでした。

チェロの音域は人の声のそれに近いと言われますが、この演奏はまるで声の良い青年の語りをずっと聞いているようでもありました。内省的であったり、懊悩するかと思えば能弁闊達であったり、歌うようにロマンティックであったり。
オーケストラはその背景描写。そのオーケストラも素晴らしく、艶やかな弦の響き、ホルンの豊かな鳴り、フルートの透明感。そして独奏チェロとの絶妙なバランスは秋山マエストロの巧みなタクトによるもの、と思った瞬間、このコンサートに立ち会えた幸運を強く感じたのでした。

実はこのコンサートの前日、夫に「実のところ、私、チェロの良さってよく分かってない」と話していたのです。というのも、以前一緒に行ったコンサートで聴いたチェロ協奏曲の共通の感想が(かなり有名な奏者だったのですが)「なんかギコギコしてないか??」というものだったのです。夫曰く「でも、本当に上手い演奏聴いたら、分かるんじゃない?」とのことでしたが、まさにその言葉がズバりと当たった感じです。

佐藤晴真さん、22歳。若い演奏家を知ったときには、ある種「育ての親」気分を持ってしまうものですが、彼は、もう既に確固たる高みの場所にいる感じです。天才とはそういうものなのでしょう。これからできる限り聴いていきたい、いろんな楽曲、構成で聴きたい。そしてそれはきっと私の鑑賞人生上、ずっと叶うであろうことが(少し悲しいけれど)嬉しくもあります。

さて、随分後回しになりましたが、メンデルスゾーンの「スコットランド」、これもとても素晴らしかった! あぁ、私はやっぱりロマン派が好きだなあ、と思いながら、回を追うごとに編成が大きくなるオーケストラの音色に感謝したのでした。
ひとつ気になるのは、冒頭モティーフがワーグナー「指環」の「死の動機」にソックリであること!年代からするとワーグナーがパクっていることになるけれど、単なる偶然?よくあることなのでしょうか?・・どうでもよいといえば、どうでもよいことですが・・

今回もハイドンマラソン時と同じく、会場外で検温、消毒。チケットと引き換えたハガキ状の入場券の下半分に氏名と電話番号を書き、自分でもぎって箱に入れる。カフェ、ショップ、プレイガイド、クロークは閉鎖。

マエストロは、「寸止め握手」および「エア握手」。
こんなところにも、それぞれマエストロのお人柄があらわれますね。

オーケストラは、ハイドンマラソン時に置いてあったフルート、オーボエ、トランペット前のアクリル板がなくなり、弦楽器の譜面台が二人に1台に戻っていました。なんだかこのまま「なし崩し」的に元通りの形になり、しれーっとR.シュトラウスなど演奏してくれたりしないかな、と(笑)

と、次のコンサート、7月22日大フィル定期はブルックナー、8月びわ湖ホールの京響はマーラー。音楽史をなぞっているようです。先月の大フィル定期(LvB4番,5番)の前にモーツァルトが入っていたら完璧だったのになぁ、とか、ブルックナーとマーラーの間にブラームス入れたいな、とか、ひとり考えています(楽しい)。オケの編成のことはよく分かっていませんが。

◇ソリスト・アンコール
カザルス「鳥の歌」

◇座席 2階上手側
弦楽のコンチェルトを聴くのにはシンフォニーホールが適しているな、と今回改めて感じました。実はフェスティバルホールで聴いたコンチェルトはどれも印象が薄めで、それは会場が大きく座席がステージから離れていることも原因かな、と思った次第です。
そして今回、特にチェロ協奏曲の演奏時は、観客がステージを囲んでいることで、感情を共有しながら一体感を持って聴いている雰囲気がホールに満ちていて、アリーナ型ホールの利点をこのように感じたのも初めてのことでした。

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