2023年11月25日(土)濱田芳通&アントネッロの「メサイア」

15時開演 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

メサイアはかつて「ベガメサイアを唱う会」で歌っていたことがあり、辞めた現在も恒例行事として毎年鑑賞しているのですが、今年はそのベガメサイアと関西フィルの第九が同日で聴きに行けないこともあって、こちらの演奏会に足を運びました。

古楽の演奏団体 アントネッロと濱田芳通氏は前から知っており、興味は持っていたのですが、実演を聴くのは初めて。以前福井敬さんが共演された際に「バロックがこんなに自由だとは知らなかった」というようなことを仰っていたのが印象に残っていました。

そして演奏が始まってすぐにそれを実感。小さな編成で小回りが利く、といった感じでもあるのですが、とにかくテンポが自由。同じ曲の途中でもテンポが大きく変わるのです。それもリタルダンドやアッチェレランドを経ずに突如ふわっと変わるのがこれまでにない体験でとても新鮮でした。

特に印象的だったのは、”Hallelujah” で最初の “for the Lord God omnipotent reigneth” の部分を倍くらいのゆっくりとしたテンポとしていたこと。重要な箇所は遅くすることで強調する、という音楽的な手法があるのだ、と発見したような気になりました。

またテンポ以外においても、独自の挿入があったのか、これまでに聴いたことのない音楽もありました。私の大好きなソプラノのアリア “How beautiful are the feet of them” は、途中レチタティーヴォが挟まれて繰り返しのある演奏。歌唱も美しかったので、長く聴くことができて嬉しかったです。

合唱は各パート4名ずつ(ソプラノのみ5名)。アルトは全員カウンタ-テナーでしたが、その声質は曲調ともマッチし、響きに深みがあり、全パート中もっとも印象的かつ感銘を受けました。そして合唱全体として、高レベルの歌唱ならではの声量と透明感が素晴らしい。

開演前には、この規模の演奏に大ホールは空間が大き過ぎるのではないか、との懸念を抱いていましたが、なにしろよく響くので、オーケストラと共にホールいっぱいに拡がる澄んだ響きを堪能しました。

ソロは、プロ合唱ならではで、合唱の中から出てきて歌う形式。部分的にやや残念な歌唱の方もいましたが、特に素晴らしいと感じたのは、前述の”How beautiful ‥” の中川詩歩さん、厚みのある響きのカウンターテナー中嶋俊晴さん、トランペットとのデュオで「ドヤ感」満載のバリトン松井永太郎さん、そして最後のソロ、カウンターテノール彌勒忠史さんはやはり流石でした。

オーケストラはもちろん古楽器での演奏で、リュートを大きくした「テオルボ」という楽器は初めて見るものでしたし、”Pifa”(田園曲)では、指揮の濱田さんがリコーダーも演奏されていてこれも印象に残るものでした。

三ケ尻正先生の訳による字幕は、舞台の上部に英語と日本語の併記で表示され、これは分かりやすくて鑑賞の助けになりました。この形式、他の合唱曲や演奏会形式オペラでも採用してほしいです。

ダブルヘッダー翌日の演奏会で、ちょっとしんどいかも?と思いながら出掛けましたが、行って大正解!ひと足早いクリスマス気分も味わえ大満足の演奏会でした。

◇座席
3階の3列目、上手側。
視界も音響も良い。ホールは上の方が音響がいい、というのを改めて実感しました。

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