2022年1月16日(日)藤田真央ピアノ・リサイタル ー ロマン派でめぐる物語

14時開演 いずみホール

演奏会から1日経ったところで書いていますが・・
再び「Mao病」に罹っています。
その演奏を聴いてしまうと、ピアノ曲を聴くたび「真央くんだったら、これをどう弾くかな?」とつい考え、その美音を想像してしまう。こんなことを考えてしまうピアニストは他にいません。稀有の存在です。

前回はモーツァルトで純粋な美しさを堪能しましたが、今回はショパン、リスト、ブラームスとシューマン夫妻、というロマン派の作曲家によるプログラム。粒立った音色の美しさだけでなく、ヴィルトゥオーゾ的なテクニックの見せ場も多い内容で、真央さんの多彩なピアニズムを知る演奏会でもありました。

前半はショパンとリスト、後半はシューマン夫妻とブラームス、というそれぞれ親しかった音楽家同士の作品で構成されており、ショパンのバラード以外は全て短調という少々デモーニッシュな感もあるプログラム。

まず最初のショパンのノクターンop.48の2曲。フォルテピアノのようなあたたかいまろやかな響きに涙腺が緩んでしまいました。ピアノはスタインウェイでしたが、この演奏会全体を通してもその音色に華々しさはなく、しっとり落ち着いた響き。そのように調律したのかもしれませんが、11月のアンデルシェフスキのときも同様の印象だったので、このピアノもしくはホールの響きなのかもしれません。

前半では、最後のリストのバラード第2番が圧巻でした。オクターブでの高速連打の超絶技巧。切れ味鋭い演奏ですが、どんなに速く弾こうとも音の粒立ちは保たれ、美音も同時に味わえる素晴らしさ。

後半は「親密な」ブラームス、クララ、ローベルト・シューマン。ストーリー性のある楽曲の並べ方で、想起させられるものがある秀逸なプログラムです。

まずブラームス「主題と変容」。ところどころ「ハンガリー舞曲」を思わせる節回しもありますが、厳格な型を守ったかのようなこの楽曲は、シューマン亡き後、クララに寄り添いつつも結ばれることなく生涯独身を貫いたブラームスその人を表しているかのようです。

クララ・シューマンの「3つのロマンス」の3楽章から途切れずそのままシューマンのピアノ・ソナタ第2番に突入したのですが、気になって後から調べたらやはり同じト短調でした。続けて演奏されたことで、夫婦の絆の強さ、そしてブラームスの師であるシューマンの存在の大きさを感じました。今風に言うと「マウンティング」でしょうか(笑)。楽曲の強さもあり、なんだか「シューマンの勝ち」みたいな感じがしてしまったのです。

このシューマンのピアノ・ソナタ、私が予習で聴いていた演奏では1楽章の主題がジャズのように、いささかエキセントリックに聴こえたのですが、この日の真央さんの演奏は、冒頭その要素は控えめで、再帰部で強く表現されていました。その方が自然にこの音楽に入っていくことができ、真央さんのつくり上げる音楽は好きだと感じました。

しかし、前半リスト、後半シューマンともに、かなり激しい音楽でしめくくられたこの演奏会。
モーツァルトの時とは全く違う、心の深いところに刺さってくる、まさにロマン派の音楽を堪能できた至福のひとときでした。

◇アンコール
熱い拍手に応え、なんと4曲も弾いてくださいました!
・モーツァルト:ピアノ・ソナタ第9番ニ長調K.311から第3楽章ロンド
・ラフマニノフ:幻想的小品集op.3から第5曲セレナード、第4曲道化師
・モシュコフスキー:15の練習曲op.72から第11番変イ長調
このモシュコフスキーのコロコロした響きは真骨頂!

◇座席
通路すぐ後ろのH列中央ブロック下手寄り。このホール最上の席(と私が思っている席)。発売日の10時00分台にネットでガシッ!とGET。
ペダルをどう踏んでいるかも見たかったけれど、前方観客に遮られ残念ながら見えず。

◇その他
ちょうどこの日の朝にBSで放送された「題名のない音楽会」で、服部百音さん、佐藤晴真さんとの「出光トリオ」で出演されていて「真央節」炸裂(笑)。
なので、前回のように演奏後のトークを期待していたのですが、それはなくて少々残念でした。
しかし、真央さん、見るたびに痩せていっているように見受けられて・・今日も空きっ腹?ちゃんとご飯食べてる?と少々心配になってしまったのでした・・

 

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