2024年3月24日(日)藤田真央&アントワン・タメスティ

14時開演 いずみホール

5ヶ月振りの藤田真央さん。
世界的ヴィオラ奏者タメスティ氏との演奏はやはり素晴らしく美しいものでした。

演奏開始前のチューニング「A音」。伸ばした指をそっと鍵盤に当て、そこから発せられる ”Sotto Voce” の美音がまさしく真央さんの音で、既にウルっときてしまいました。たった一音で聴衆を惹きつける。稀有のピアニストです。

今回は、シューベルトとシューマンを軸にしたプログラムで、リート作品も含んだものでした。

真央さんのエッセイ「指先から旅をする」の中に「音楽と言葉はともに高め合うことのできる関係であり、歌曲はそれが分かりやすい形で協働している。最良の成果を挙げるなら、シューベルト『美しき水車小屋の娘』。曲調と歌詞の双方に導かれるようにして、情景が次々と浮かび上がって素晴らしい(要約)」という一節がありました。

ドイツ・リートへの関心を高めている、という真央さん、ヴィオラとのデュオ・リサイタルにあたり、コンセプトを「歌」としたのでしょうか。

ちなみにこのデュオは、ヴェルビエ音楽祭の際、同じ海外マネジメント事務所に所属するタメスティ氏から真央さんにお誘いがあり実現したそうです。

ヴィオラは——タメスティ氏の演奏技術があってのことかもしれませんが——ヴァイオリンの艶やかさとチェロの深みの両方を持ち合わせた「いいとこ取り」の楽器だと感じました。そして、高すぎず、低すぎず、歌うのにちょうどよい音域と音色。

タメスティ氏の豊かに歌うヴィオラに繊細極まる美弱音で寄り添う真央さん——しかし、その真央ワールドにタメスティ氏が引き入れられているようにも聴こえ——この美しき丁々発止に、時が止まると音楽も止まる、という矛盾は承知しつつ、このまま時が止まってほしい、と何度も思いました。

前半のモーツァルト、シューベルトのソナタも素晴らしく、とくに緩徐楽章は涙腺が緩む美しさ——先日来、「物足りない」やら「感動しない」やら不満を述べがちでしたが、やはり感動するときは感動するのだ、と再認識するとともに安堵の思いも抱くことができました。感謝。

優れたピアニストは、ソロはもちろん、コンチェルトも室内楽も素晴らしい。
次にその演奏に接することができるのは5月末。京都と兵庫で山田和樹指揮/モンテカルロ響とのコンチェルトを聴きます。

 

◇アンコール
シューマン:歌曲集「ミルテの花」より「献呈」
リスト編曲のピアノ版を聴く機会が多く、こうして原曲に近い形で聴くのは初めて。旋律の美しさと歌心、心地よいヴィオラの響きと優しいピアノの音色。涙腺が緩みました。
後奏のシューベルト「アヴェ・マリア」の旋律、このリサイタルの締めくくりに嵌りすぎていてゾクリ。
演奏の前に、真央さんから「クララとやっと結婚できることになったシューマンが結婚の前日にクララに捧げたもの・・」との解説がありました(マイクなしで残念ながらよく聴き取れず)。

シューマン:「おとぎの絵本」より第4曲を再演
楽譜を忘れてきた真央さん、袖に取りに帰る(笑)。こういうところも愛されキャラです。

◇座席
P列下手通路側
いずみホールでピアノを聴く際はこの辺りと決めているのですが、タメスティ氏が真央さんに近づくと真央さんが見えなくなり——今後デュオ・リサイタルの時は中央ブロックにします‥。

◇その他
サイン会はなかったのですが、ロビーにお二人のサインが飾ってありました。
楽屋口前で出待ちの列ができていましたが——たぶんお二人は直接地下の駐車場に降りて行かれたんじゃないかな?——と思って並びませんでした(笑)

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