2022年12月2日(金)マリア・ジョアン・ピリス ピアノ・リサイタル

19時開演 ザ・シンフォニーホール

ピリスさんの4年ぶりの来日公演。

この公演に行ったのは、ベルリンフィル・デジタルコンサートホールでベートーヴェンのピアノ協奏曲4番を視聴したのがきっかけなのですが、演奏が素晴らしかったのはもちろん、その毅然と年を重ねた佇まいにも心打たれるものがあり、実際に見て聴いてみたい、と思ったからなのです。

日本でも以前から人気の高いピアニストであり、2018年に一度引退宣言をしたものの近年活動を再開した、ということは、その後知ったことです。

プログラムは、シューベルトのソナタ13番と21番の間にドビュッシー「ベルガマスク組曲」を挟んだ構成。

演奏が始まった途端、確かにこれは引退するのは惜しい!と思いました。
テクニックが身のうちにすっぽりと入っていて揺るぎない。ペダリングを含めたピアノの鳴らし方が素晴らしく、楽器との一体感を強く感じました。そして力強さとともにあたたかさや可愛らしさもあり——それはシューベルトの音楽に備わったものではありますが、その音楽との同調性を感じました。

1944年生まれなので今年78歳。その顔にも手にも深い皺が刻まれているのですが、それが説得力のある美しさ。老いを自然のこととしてあるがままに受け止めているように見受けられ、その潔さに感銘を受けます。ショートカットにコム・デ・ギャルソン風のモノトーンのドレスも素敵で、この方はすべてにおいてセンスがいいのだ、と感じました。4歳から演奏活動を始めた天才少女は、年の重ね方も天才的。こんな風には生きられないなぁ、とも感じてしまったのでした。

この日使用されたピアノはヤマハCFX。高音域がチャリンと平たく薄い音質なのが少々残念。スタインウェイの丸く深い音で聴きたかったな、と思ってしまいました。

◇アンコール
ドビュッシー「アラベスク」

◇座席
2階正面最前列中央。手も表情も見える、やはりここが最良席。
ちなみに2階レベルでは、両サイドとオルガン席にばかり客がいて、正面席にはまばら。見切れて視界がかなり悪いと思われるオルガン席に近いサイド席に特に客が集中しており、これはなんらかの事情があるのかと勘ぐってしまいました。

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