2022年12月16日(金)阪田知樹ピアノリサイタル「ショパンを巡って」 第2回

19時開演 兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院小ホール

やっと「ピン」で聴けた阪田知樹さん!
一夜明けた今でも、充実感、満足感、そして幸福感でニコニコしてしまう、素晴らしい演奏会でした。

先週のトリオを含め、これまで室内楽ばかりで3回聴いた阪田さん。リサイタルを聴きたいと思いながらなかなか日程が合わず、今回やっと念願が叶いました。

「ショパンを巡って」の3回シリーズ第2回の今回は「踊りから花開くピアノ音楽の世界」というタイトルで、バッハ、シューマンから始まり、珍しいところでフローラン・シュミット、そしてラヴェル、最後にショパンのそれぞれ舞曲を元にした作品でのプログラムでした。

開演の15分前から阪田さん自身のプレトークがあり、楽曲や作曲家の解説が行われ、これは鑑賞にあたって大いに助けになりました。阪田さんはお話しも上手く、しかも話したいことがたくさんあるご様子で、次から次へと淀みなく説明を進め、なんと15分できっちり終わるという、こちらも名人芸。

前半、バッハ、シューマンを聴き、後半はまずフローラン・シュミットの「ワルツ・ノクターン」。ラヴェルと同時代のドイツ系フランス人の作曲家で、現在あまり演奏されることはないそうですが(私は名前を聞くのも初めてでした)、何とも魅惑的な作品。フォーレやドビュッシーに通ずる浮遊感とプーランクのような洒脱さもあり、弱音ペダルを使ったピアノの音色がスモーキーで、ジャジーな大人の夜の音楽。その後にラヴェル「高雅で感傷的なワルツ」が続くのがたまりません。耽美的な世界にどっぷりと浸っていると、いつのまにかショパンのマズルカが始まっていました。

ショパンはやっぱりいいなぁ、と思っているうち、あっという間に終曲の「バラード4番」。
この冒頭で、「これはポリフォニーなのだ」と気づきました。最初にバッハを聴いていたからです。途中のフーガにもバッハの影響を感じ取ることができ、ショパンがバッハを敬愛していたという話を思い出しました。

この演奏、前半はほぼずっと弱音ペダル使用で、ショパンの時代の音色での演奏だったのですが、後半激しい音楽に変わってくると、もうこれはヴィルトゥオジティの世界。待ってました!そう、この人はめちゃめちゃ弾けるんです!頼もしい!

室内楽もよいけれど(いや本当に素晴らしかったのですが)、しかし、その実力のほどが全開になる演奏、やっぱりこれが聴きたかったんですよね。嬉しい!幸せ!

そして、アンコールは更に進んで、リスト「リゴレット・パラフレーズ」。やっぱりこの超絶技巧。聴衆の欲望をちゃんと掴んでいらっしゃる。

アンコールの前には、アフタートークもあり、これまであまり弾いてこなかったショパンの「バラード4番」を弾きたいと思い、この曲から逆算してプログラムを組み立てた、とのことでした。種明かし、ですね。これは、先ほどショパンにバッハを感じたことに対して「それ正解です」と言ってもらえたようで嬉しかったです。

「『ショパンを巡って』と題しておいて、ショパンが殆どないではないか、というクレームもありまして(笑)」と仰っていましたが、いやいや、ショパンのバラードを聴くための耳を育てていただいてありがとうございました。すっかり術中にはまりました。こういうコンセプチュアルなプログラム、大好きです。

そして、これだけの多彩な音楽をそれぞれぴったりな表現で演奏する、なによりその技術力と美的センスが素晴らしく、本当に大満足の演奏会でした。

ちなみに、来年の同シリーズでは、シューマンの「クライスレリアーナ」とショパンの「24の前奏曲」というプログラムなのだそうです。
2023年12月15日(金)。
ぜったい行きます!

 

◇アンコール(先述しましたが)
リスト:「リゴレット・パラフレーズ」

◇座席
正面真ん中の最後列。最高の席!
ピアノ・リサイタルを聴くのに最上の席だと思いました。この小ホールはすり鉢状の構造なので、ステージが近くにありながら上から俯瞰して見られる。手元、脚元、表情もバッチリ。音響もいい。前席の客とは被らず視界も良好で、超大型の飛び出すテレビを真正面から見ているような気がしました。

◇その他
ひとりで聴きに行ったので、感想を語れる相手がおらず——「めっちゃ良かったー!」と吠えたかったのですが——ということをTwitterに呟いたところ、なんと阪田さんご本人から「いいね!」をいただきました。噂通り(笑)だけど掴まれますね!

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