2022年5月14日(土)秋山和慶指揮/日本センチュリー交響楽団第264回定期演奏会 ヴァイオリン辻彩奈

14時開演 ザ・シンフォニーホール

今月のセンチュリー定期は、英国プログラム。
センチュリーの美しい響きの魅力にあふれた素晴らしい演奏会でした。

英国の作曲家ディーリアス、ヴォーン・ウィリアムズはあまり演奏されていませんが、今年はヴォーン・ウィリアムズの生誕150年ということで、日本のオーケストラがこぞって採り上げており、なんとこの同日に名古屋フィルで交響曲5番、群馬交響楽団でも5番が演奏され、さらに次週は九州交響楽団で3番が予定されています。

素晴らしい作品であることは皆承知しているものの、作曲家の一般的な認知度が高くないため、「○○周年」といった銘打つものがないと集客上採り上げにくいのかな、と推測していすが、これを契機にもっと演奏機会が増えてもよいのではないかと思いました。

音楽の中心地ウィーンでは「十二音技法」が最先端であった時代、大陸から離れたイギリスで作られていた音楽は、周回遅れで古臭いと思われていたのでしょうか。しかし、調性のある旋律、美しい和声、流れるような豊かな楽想など、一般的に求められるクラシック音楽の素晴らしさを具備したこの時代のイギリスの音楽は、ロマン派の行きついたひとつの形かと思います。しかもシェーンベルク初期などの「腐る寸前」的な美しさ(スミマセン)とはまた違って、「正統的」な香りがします。

1曲目はディーリアスの「ブリッグの定期市」。同名のイングランド民謡をモチーフとする変奏曲で、次々に美しい旋律が現れ、流れるように過ぎていく、ひとときの夢のような音楽でした。

2曲目は、辻彩奈さんのヴァイオリン、篠崎和子さんのハープによる、ブルッフの「スコットランド幻想曲」。ヴァイオリンの名手、サラサーテのために書かれただけあって、技巧的な演奏が楽しめる作品。ブルッフはドイツ人で、ブラームスなどと同時期の作曲家ですが、保守的な作風はこの英国プログラムにピタリとはまります。ちなみに、ブルッフはヴォーン・ウィリアムズの先生だったそうです。

辻さんは、昨年大フィル定期でのブリテンのヴァイオリン・コンチェルトが素晴らしかったので、とても楽しみにしていましたが、期待以上の素晴らしい演奏でした。

まず、音色が素晴らしい。煌びやかで豊かな広がりがあり、高音の冴えた艶やかさ!「麗しい」という言葉が浮かびました。佇まいから察するに、辻さんは「男前キャラ」とお見受けするのですが、思い切りの良さが随所に現れる演奏で、フィナーレのキレの良さは胸のすくような爽快感がありました。

ソリスト・アンコールはハープとともに、エルガーの「愛のあいさつ」。これは涙腺が緩むほどの美しさでした。

後半はヴォーン・ウィリアムズ交響曲第3番「田園交響曲」。
第一次世界大戦で戦死した作曲家仲間のバターワースを追悼した作品とも言われているそうですが、交響曲の形式は守られているものの、4楽章にソプラノのヴォカリーズが入ります。ホルストの「惑星」を思い起こしましたが、ホルストも同時代の英国の作曲家。影響し合うことがあったのかもしれません。

ソプラノは現在関西で人気の古瀬まきをさん。3月の関フィル合唱団自主公演でソリストを務めていただき、その艶やかな高音に魅せられましたが、まさにこの曲にぴったりでした。2階下手側のバルコニーでの歌唱。

4楽章ともゆったりとしたテンポで、管楽器が多く用いられていて、全体にたっぷりとした豊かな音楽。2楽章ではホルンとトランペットがそれぞれナチュラル楽器に持ち替えられての演奏もあり、美しさの中にも心を捉えられるものがある作品で、秋山マエストロが導く、センチュリー交響楽団の端正な美しさを堪能しました。

 

◇ソリストアンコール(前述しましたが)
エルガー「愛のあいさつ」

◇その他
例によって雑学ですが、この時代の作曲家の生年・没年を調べていたら、なんとディーリアス、エルガー、ホルストの没年が3人とも同じ1934年でした!(まったくどうでもいいことですね笑)

◇座席
定期会員なので毎回同じ席なのですが、行ってみると、先月の「イビキおじさん」が今回もまた同じ席に座っているではありませんか!そして案の定、1曲目からイビキ!とうとう耐えかねて、曲の途中に振り返って膝を叩きました。と、全く同時に通路を挟んだ私の反対側の男性も振り返り、鬼の形相でチラシの束でおじさんを叩いたのです。阿吽の呼吸!? やはり皆さん頭にきてたのですね。これでさすがに2曲目は静かでしたが(静かなのも逆に気になります笑)、休憩が始まったときに「イビキかかないでくださいね」と口頭注意しました。手刀苦笑いで「スンマセン」。しかし交響曲は長いのでキケン、と思い、休憩後は空いている後方の席に移動して鑑賞したのでした。

イビキの人が定期会員と言うのもオドロキですが、翌日、オケ事務局に電話で事情を伝えたところ、席を変えてもらえることになりました。柔軟な対応。とりあえず、良かった。

というわけで、この日も集中力が欠けた状態での鑑賞でありました。残念・・

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