2020年9月25日・26日(金・土)沼尻竜典指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団 第541回定期演奏会

フェスティバルホール

先週のR.シュトラウスから、今週は少しだけ時代を戻って再びマーラー。
8月びわ湖での4番と同じく、沼尻マエストロで「大地の歌」。
今回は2日とも鑑賞しました。
毎週至福の時間を過ごしています。

私は定期1日目の会員なのですが、とても素晴らしい演奏だったのでもう一度聴きたい!と思い、2日目は当日券で鑑賞。前回7月定期(ブルックナー6番)の2日目に行かなかったことを後悔したので(両日聴いた方によると2日目が更に良かったとのこと)、今回は思い切って行きました。

今回の演奏会もフェスティバル・ホールの広い舞台を目いっぱい使った配置で、奏者は最大で91人。ヴァイオリンとヴィオラの最後列は椅子が舞台から落ちる寸前くらいにまで手前に配置されていました。

プログラムは武満徹「星・島」、三善晃「連禱富士」、そしてマーラー「大地の歌」。まるで7月のびわ湖ホール声楽アンサンブル特別演奏会とのカップリングのようで、私にとっては序章を聴いた後の本編のような楽しみ方のできるプログラムでもありました。

交響曲と銘打ってありますが、オーケストラ伴奏版歌曲のような「大地の歌」。声楽ソリストのクリスタ・マイヤー氏(アルト)とシュテファン・ヴィンケ氏(テノール)の来日が叶わず、中島郁子さんと望月哲也さんが代役での演唱。

大編成のオーケストラを背負っての歌唱、声がオケに埋没しないかと少々心配していたのですが、そこはさすがの沼尻マエストロ。歌の入りのところでは、音質の煌びやかさはそのままにすぅーとオケの音量を下げるその滑らかな運びに惚れ惚れ。歌唱とオケとの絶妙なバランスに、オペラでオーケストラピットを真上から覗いているような、或いは演奏会形式のオペラを観ているような、贅沢な感覚を覚えました。

1日目は2階最前列(今回もマイシートの3席下手側)だったので、2日目はもう少し近いところで歌声を聴きたい、と1階の後部席にしたのですが、狙い通りで声と弦楽器の音もクリアに聴こえ、緻密なアンサンブルを楽しめましたし、2日目の方がオケ、特に弦楽器の演奏がさらに繊細で、歌に寄り添っている感じがしました。

中島郁子さんの声はつやつやと美しく、深みと温かみがあってうっとり。今年の「ニューイヤーオペラコンサート」でのカヴァレリア・ルスティカーナ「主はよみがえられた」に大変感銘を受けたのですが、その期待通りの素晴らしい歌唱。佇まいの凛とした美しさにも魅かれました。望月哲也さんも張りと力強さがあって良かったのですが・・ほろ酔いの楽しそうな歌なのにすごく険しい表情で歌われていて(オケの大音量と闘わなければならないので、テノールは大変なのだと思います)、軽妙な動きで指揮をされているマエストロの方が演技巧者だな、と思って見ていました(笑)

前半2曲目の三善晃 交響詩「連禱富士」は、「アルプス交響曲」なみにパーカッションが多彩で、ウィンド・マシーンを2週続きで見るという稀有な?体験も。スティール・パンも使われていて、そのカリビアンな音色がまた異なった趣きを醸していて興味深く聴きました。

「連禱」とは聞き初めの言葉で、原題の”Litania”を仏語辞書で調べてみると(”Litanie”)、そのまま「連禱」および古語で「祈願祭」。カトリックの礼拝の形式なのですね。俗語で「くどくどと並び立てる」。どうも後者の方が曲のイメージに合っているようで、初めて聴いた時の印象はひとことで「カオス」。後でプログラム解説を読むと、「カオス」の文字が書かれていたので、間違いではなかったようです。

「富士山を拝む」というと、泰然とした静的な佇まいに対する畏敬の念、というイメージですが、この作品は原初富士山の誕生、マグマのうねりや爆発的噴火をあらわしているようで、とにかく動的でカラフル。静的なイメージが横山大観の描く富士であるとすれば、この楽曲は梅原龍三郎や片岡球子の描く、動的で色鮮やかな富士でしょうか。

梅原龍三郎

片岡球子

このイメージが頭をぐるぐるとめぐっていました。
以前、美大出身の友人が「富士山は大家のみが描くことを許される画題」なのだと語っていたことをふと思い出しました。

◇その他
2日目の開場前、なんと沼尻マエストロとお話しできるという僥倖を得ました!
当日券を買った後、ホール下階に降りたところで地下へのエスカレーターに向かって歩くマエストロを発見。これは・・と思い、失礼ながらそーっと後をつけ、エスカレーターを降りたところでお声掛けさせていただきました。2日目も来てしまったことなどを手短にお話したところ「ありがとうございます」と、そのあとなぜか「コンビニに行こうと思ってんだけど」。え??
コンビニがあるのと反対方向に向いていらっしゃったので、「あ、コンビニはあちらにあります。ローソンです」と教えて差し上げました。笑。
私はよく人に道を訊かれるのですが(自分が旅行中に訊かれたりもします)、沼尻さんにまで道を訊かれるとは・・案内するためにお声掛けしたみたいです。でもお役に立てて嬉しかった。今回の最大の収穫はこれでした。

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