2024年3月10日(日)METライブビューイング「カルメン」

11時05分開演 大阪ステーションシティシネマ

世界屈指の「カルメン歌い」との呼び声高いメゾ・ソプラノのアイグル・アクメトチナ氏が目当てで、前日に思い立って急遽の鑑賞。

期待を遥かに凌ぐ、素晴らしいカルメン!

今までに生でも映像でも何度となく観たカルメンですが、実は「これ」という歌唱に出会ったことはありませんでした(ひとつ挙げれば、6~7年前にデュトワが指揮したN響定期の演奏会形式でのカルメンは素晴らしかった!)。

ビゼーは「高めのメゾ・ソプラノ」という指定をしていたそうですが、この役の音程は、張って出すには低すぎ、ドスを効かすには高すぎるといった感で、これまでに聴いたカルメンは高音はファルセット気味に上ずり、低音には深みがない、といった印象でもどかしさを感じるものが多かったのです。

しかし、このアクメトチナ氏はどの音程も均質で中身のつまった濃密な声質。高音の艶やかさと低音の迫力も持ち合わせており、聴きたかったのはまさにこの声!求めていたものがやっと手に入った、と嬉しくなりました。

初役は21歳でロイヤル・オペラでの代役だったそうですが、現在まだ27歳。メトでも史上最年少のカルメンだったそうです。しかし貫録十分、題名役としての存在感を放っていました。

脇を固めるドン・ホセのピョートル・ベチャワ氏の甘く強靭なテノールも素晴らしかったし、チャーミングなエンジェル・ブルー氏のミカエラの歌唱も美しく説得力のあるものでした。エスカミーリョのカイル・ケテルセン氏はこの役を何十回と歌っているベテランだそうですが、ちょっと埋もれがち。せっかくの若いカルメンなので、エスカミーリョも若いライジング・スターに託してみればよかったのでは、とも思いました。

このプロダクションは時代設定を現代のアメリカとし、タバコ工場は武器工場、エスカミーリョはロデオのスターとした読み替え演出でしたが、特に違和感なく(説得力もあまりなかったのですが)楽しめるものでした。

キャッチーな名曲が次々に現れるこのオペラは、演出がどうであれ楽しめるものなのですが、それにしてもカルメン、素晴らしかった!

実は、前日に「メトのカルメンの歌手が凄いらしいよ」と夫に話したところ、「行ってみたいな」と言うので、じゃあ行こうか、となったのですが、夫も大満足だったようでよい休日になりました(一緒に出掛けたオペラや演奏会がイマイチだと険悪な雰囲気になることが多いのです 笑)。

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