2023年1月21日(土)ワーグナー・ゼミナール(上級編)『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の音楽を読む

14時開始 びわ湖ホール リハーサル室

昨年の「パルジファル」のセミナーはチケット売り切れで受講できなったため、今年は早々にチケットを購入。当日は早めに行き、最前列の真ん中に陣取ってじっくり聴かせていただきました。

講師の岡田安樹浩さんの話はテンポがよく、映像やピアノ演奏を用いた解説はとてもわかりやすいもので、毎回人気なのもよくわかります。ネットで調べれば情報はたくさん出てきますが、こうして直に聴講すると理解の精度が高く、また効率的でもあります。

ということで、以下備忘録。

〈前奏曲〉
・前奏曲にほぼすべてのモティーフが入っている。通常オペラの前奏曲は、本編の作曲が終わったのちにその要素を取り出して作曲するが、逆の手法となっている。
・本編を作曲するよりも前に前奏曲をライプツィヒ・ゲヴァントハウスで自ら指揮し披露している。

〈擬古典主義〉
・物語の設定が16世紀中頃の南ドイツなので、ロマン派以前のバロックや古典派のスタイルを疑似的に取り入れている。フーガやカノン、3つのモティーフの同時進行など。
・意図的に古典派の楽器編成に近づけてあり、ベートーヴェンにない楽器はテューバのみ。しかもテューバやトロンボーンの登場も極めて限定的であり、暗い音色を意図的に避けていると思われる。
・イングリッシュホルン、バスクラリネット不使用(←元バスクラ吹きには悲報)
・楽器編成が指環などと比べるとコンパクト。
ホルン:指環8台→4台、ハープ:指環6台(!)→1台
楽器が少ないので、オケでの支出は少ないが、合唱人数が多いので全体ではどうなのでしょう?(笑)
・ホルンを木管楽器として使っている。スコアのホルンパートは木管楽器群に位置付けられている。バルブが発達して木管のような音形が演奏可能になった。ホルン首席のR.シュトラウス父曰く「ワーグナーはホルンをクラリネットの様に書く」。
・第3トランペットのみC管となっており、自然倍音のみとなっている。(←先日のプレトークでの質問はこれだったのですね)

 

前奏曲冒頭部のスコア(配布資料の一部)

古典派の楽器編成でも「ワーグナー・サウンド」がするのは、各楽器がさまざまに折り重なって声部を構成する「管弦楽的多声法」であったり、声楽声部の多くを管弦楽が複雑に重複して書かれてあったりするからなのだそうです。

私などは、第一音目の和音、そして2小節目アウフタクトのシンコペーションで既に持って行かれてしまいます。かつて通勤時には、この曲とローエングリン、ワルキューレの前奏曲の3曲をウォークマンでグルグルとリピート聴きしていました。よっしゃー!と気合を入れるためです(笑)。人の心を動かす音楽。それゆえプロパガンダにも使われてしまったのでしょう、などと考えつつ・・

さて、これから約1ヶ月間、聴く予習も楽しみながら、3月の本番(その前にゲネプロ見学も)を待ちます。

しかし、こんな風に「勉強」することが楽しいのはワーグナーならでは。「ワーグナー」と「ゼミナール」の相性の良さよ!
でもそれも今年で終わり。来年から寂しく、物足りなくなります・・。

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